外国人ビザ(在留資格)申請について〈経営管理・他身分系ビザについて〉 

 このページでは、外国人の方が日本国内において、「会社経営をしたい」という場合に必要な「経営・管理」や、日本にこれからも住み続けたいという外国人の方が取得を目指される「永住者」、日本人と国際結婚をされて日本に住む場合に必要になる、「日本人の配偶者等」、あと、ビザではありませんが国籍を日本にする、要するに日本人になる、「帰化許可申請」についてご説明させていただきます。
 
●経営・管理
 経営・管理ビザは、日本で起業して経営活動を行いたい、あるいは比較的大きな会社での管理職以上に就任する場合に該当するビザになります。日本で起業して経営活動を行いたいという依頼が多くをしめますので、まずはそのスタートである「会社設立」の手順から説明致します。

【外国人の日本での起業(会社設立から)】

外国人の方が日本で起業したい場合、ほとんどが以下のパターンに当てはまります。
・日本で会社員をしている外国人が独立起業をするには?
・留学生が卒業後に起業するには?
・本国で会社を経営している外国人が日本に進出するには?
・本国では会社経営をしていない外国人が、いきなり日本で起業するには?

経営管理ビザを申請する前には、会社設立の手続きが必要になりますので、外国人本人が現在日本で住んでいるのか、住んでいないのかで手続きが違ってきます。

会社設立(法務局への設立登記申請・事務所契約等)→設立後の手続き(営業許可等)→経営管理ビザ申請

以上のように、会社設立と許認可申請等を行ってからのビザ申請になりますので、失敗すると大きな損失になります。なので、しっかりとスケジュールを組み、手続きを進めていく必要があります。まず、外国人が日本で会社設立する手順を説明します。

(1)外国人が日本で会社設立するには?
 会社法上において、外国人が一人で株式会社や合同会社を設立することは可能です。日本で会社員をしている外国人が独立起業したい場合や、留学生が卒業後に起業したい場合は、日本に住所もありますし、日本の銀行口座もありますから、会社設立手続きはスムーズに進めることができます。難しいのは、海外居住の外国人が、日本で会社を一人で設立できるかというところです。

課題①:日本の銀行口座がない
 (会社設立のためには、手続上個人口座がないとできない)銀行口座がないと、出資金を振り込む先がないので、実際上は会社設立が不可能になります。観光(短期滞在ビザ)で日本に入国しても、銀行は中長期滞在者が所持している正規のビザをもっていない外国人に対してはマネーロンダリング防止の観点から個人口座を開設できないようになっています。そこで、出資金を振り込む先の口座を用意するために、中長期のビザで滞在する外国人か日本人に協力を依頼し、一時的に役員になってもらって、出資金の「受け皿」になってもらいます。本人が無事、経営管理ビザを取得して来日した際には、役員を降りることになります。

課題②:事務所や店舗の不動産物件の契約ができない
 日本で会社設立するには、会社住所を定めなければならず、経営管理ビザを取得するためには、自宅と会社事務所の住所を別にしなければなりません。したがって、外国人が会社設立する際には、必ず事務所や店舗を確保する必要がありますが、日本で不動産の賃貸借契約を行うには通常、日本の印鑑証明書や身分証明書が必要です。この場合でもやはり、銀行口座と同様に、協力者の存在が必要になり、一時的に役員になってもらい、事務所の賃貸借契約を代わりに行ってもらう必要があります。

(2)外国人の会社設立の流れ
 以下、会社設立の流れを説明しますが、まずは、株式会社と合同会社の違いを簡単に表にします。

※一覧表をスマートフォンで閲覧される場合は、横にスクロールをお願いします。

 株式会社合同会社
会社代表者と出資者との関係会社代表者は出資者でなくともよい出資者が会社を代表する
出資者の譲渡自由に株式を譲渡できる他の社員の承諾が必要
出資者個人・法人とも可能個人のみ
設立実費額20万円6万円
知名度高い低い
 
一般的な知名度は、圧倒的に株式会社のほうです。ただ、合同会社のメリットは、設立の実費が安く済むのと、株式会社で必要な、公証役場での定款認証の必要がないなど、費用面や手間の面でやや簡易に設立することができます。
 
株式会社設立から経営管理ビザの申請までの全体の流れについては、以下の通りです。
①株式会社の基本事項を決定する
②その基本事項を基に「定款」を作成して、公証役場で認証する
③「資本金」を振り込む
④法務局へ法人設立登記をする
⑤税務署へ各種届出をする
⑥許認可を取得する(必要な場合)
⑦出入国在留管理局へ経営管理ビザの申請をする
 
では、以下で各項目についてご説明します。
 
①株式会社の基本事項を決定する(定款に記載する内容を決める)
ⅰ.会社名(商号)を決める:会社名を決める際ですが、いくつかのルールがあるため、注意が必要です。一つ目のルールは、会社名の前か後に「株式会社」の文字を入れる必要があります。二つ目のルールは、使える文字ついてですが、日本語の漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、数字、&・ー(ハイフン)等の一定の符号に限られ、中国語の簡体字や繁体字、ハングル文字等は使えません。
ⅱ. 会社住所を決める:会社設立の段階では、会社住所については自宅でも問題ないのですが、最後の経営管理ビザの申請においては、自宅が会社住所では、基本的には許可されません。(自宅でも一戸建てで、1Fを事務所専用にしてかつ、玄関を自宅と事務所を別々にする等をすれば、許可の可能性はあります)ですので、物件がなかなか見つからないなどでとりあえず自宅を事務所にして会社設立をする場合でも、経営管理ビザの申請前には別に事務所を借りて、会社住所の変更登記をする必要があり、この変更登記には手数料がかかります。
ⅲ. 事業目的を決める:基本的には会社設立後にすぐに行うとする事業目的を記載すればいいのですが、すぐに行うつもりはないが、将来行う予定の事業があれば、前もって入れておいてもかまいません。後で事業目的を追加したり削除したりするときは、法務局への手数料が発生します。そして、許認可ビジネスを行おうとする場合には、事業目的にしっかり記載していないと、原則としてその許可が取れません。例えば、リサイクルショップをしたい場合は「古物営業法に基づく古物商」「中古雑貨の販売」などと、事業目的に定める必要があります。この他、資本金代表取締役と出資者の決定取締役の任期事業年度があります。
 
②「定款」を作成して、公証役場で認証する
ⅰ. 会社の名前
  株式会社にする場合は、「株式会社」という文字を必ずつける必要があります。会社名の前か後ろのどちらかに付けます。
ⅱ. 会社住所
  会社設立手続き前に会社住所を決めておく必要があります。とりあえず自宅住所等にした場合は、経営管理ビザ申請前に他に事務所を借り、改めて移転の手続きをする必要があります。
ⅲ. 資本金額
  起業して経営管理ビザを取るためには、基本的にビザを取りたい人が、一人で500万円以上出資する必要があります。資本金については、会社設立後は使ってもいいお金です。また、資本金が1000万円未満の会社は2年間、原則として消費税が免除になりますので、999万円以下の会社をつくる外国人のかたが多いようです。
ⅳ. 代表取締役と出資者の決定
  小さい会社の場合は、代表取締役と出資者(お金を出す人)は同じ人になるケースが多いです。しかし、同じにしないといけないわけではなく、代表取締役と出資者は別人でもかまいません。
ⅴ. 取締役の任期
  2年~10年の範囲で選べます。
ⅵ. 事業年度
  これは、決算をいつやるかです。4月1日~3月末とか、9月1日~8月末とか、自由に決定できます。
ⅶ. 事業目的
  設立する会社ではどんなビジネスをするのかについて事業目的を決定します。今すぐにはやらないけれども、将来はやる予定であるビジネスについても記載しておくことができます。事業目的の記載で重要なのは、営業許可を取らなければならないかどうかです。古物商や人材派遣業、不動産業を行う場合で営業許可を取るためには事前に定款の事業目的に入れておかなければなりません。
・以上これらをすべて決めて作成後、公証役場に持って行って公証人に認証してもらいます。公証役場では定款の認証手数料5万円と謄本代実費が必要になりますが、定款の原本に必要な印紙代4万円については、行政書士等に依頼すれば電子定款に対応できますので、印紙代4万円は不要にできます。

③「資本金」を振り込む
  会社の資本金を振込みます。振込先は発起人の個人口座で、必ず、公証役場での認証が終わった後に行います。発起人の個人口座は「日本の銀行の口座」である必要があります。海外銀行の日本支店の口座でもOKです。振込みが完了すれば、その振込みの事実が記載されている通帳をコピーして、コピーと払込証明書を保存しておきます。これが資本金を払い込んだという証明書になります。 

④法務局へ法人設立登記をする
  設立登記に必要な登記申請書類一式を作成し、法務局へ法人設立登記と会社代表者印の登録を行います。登記申請日が、「会社設立日」になります。特に補正がない場合は、登記申請日から約1週間で「登記事項証明書」が取得できます。法務局への必要な費用(登録免許税)については、15万円あるいは、資本金額の1000分の7のいずれか高い方の金額が必要になります。
・登記申請に必要な書類について
役員全員が日本居住の場合:各個人の日本の印鑑証明書2通、各個人の実印、会社の実印  役員の中に海外居住者がいる場合:中国人の場合は本国発行の「印鑑公証書」+翻訳文、台湾人の場合は本国発行の「印鑑証明書」+翻訳文、韓国人の場合は本国発行の「印鑑証明書」+翻訳文、前記3国以外の国籍の外国人の場合は、その外国人本人の本国発行の「サイン証明書」+翻訳文、日本居住の役員の場合は日本人外国人を問わず日本の「印鑑証明書」それと最後に、会社の実印

⑤税務署へ各種届出をする
 法人設立届・給与支払事務所等の開設届・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請等、各種税務署に届け出る必要がある申請を行います。

⑥許認可を取得する(必要な場合)
 古物商許可、免税店、人材派遣業、旅行業、不動産業、建設業等、許認可が必要なビジネスをする場合は、経営管理ビザの申請の前に、許認可取得が必要です。

⑦出入国在留管理局へ経営管理ビザの申請をする
 在留資格認定証明書交付申請、あるいは在留資格変更許可申請、事業計画書、その他各種証明書を準備した後に、出入国在留管理局へ経営管理の申請を行います。

(3)会社設立時の資本金の払込み口座について
 先程も触れましたが、外国人が日本で会社設立をしようとする時に、よく問題となるのが、日本の銀行の個人口座開設の問題です。既に日本に在留している外国人であれば、日本に銀行口座を持っているのが普通ですが、海外に居住している外国人は、日本に銀行口座を持っていないのが普通です。そして日本の銀行はどの銀行でも、短期滞在ビザで入国してきた外国人に対しては、口座開設を認めていません。海外居住の外国人が日本に銀行口座を持っていない場合は、日本に在住の中長期滞在ビザを持っている外国人か、日本人に一時的に役員となる協力者になってもらい、そのかたの銀行口座に資本金を振り込むという方法があります。しかし、最近の法改正により、特例として役員でない者の口座も使えるようになりました。ただしいずれにせよ、誰か口座を貸してくれるかたを探す必要はあります。ただ、口座だけ協力してもらい、役員に入らない場合は、さらにその後の不動産契約(事務所賃貸借契約)や会社設立後の法人口座開設の手続きが進まないというデメリットは発生します。

資本金の払込み取扱金融機関:会社設立時に資本金の払込みができる金融機関は以下の通りです。

日本の銀行の日本国内の本店・支店
日本の銀行の海外支店
外国の銀行の日本国内の支店(認可を受けて設置された銀行)
 ここでの注意点は、「②日本の銀行の海外支店」ですが、現実には新規で口座開設するのは、ほとんど不可能とのことです。例えば、みずほ銀行の上海支店の場合ですが、ここは基本的に上海に進出してきた日本企業向けに融資などの金融サービスを行っているだけであり、中国在住の中国人個人に対してはサービスを行っていません。日本の銀行の海外支店はどの国も同じで、口座開設はそもそもできません。そのため、現実的には➀か③を選択して資本金の払込み手続きを行う必要がありますが、やはり日本国内在住の外国人か日本人に一時的に協力者になってもらう必要があります。そして、資本金を振り込むタイミングについては必ず、「定款認証日以後」に振り込む必要があります。定款認証前ですと、振り込まれたお金が個人のものなのか、資本金としてのものなのかが判断できなくなるからです。

・振り込んだ資本金は経営管理ビザの申請前に使ってもOK?
 会社設立が完了すれば、個人口座に振り込んだ資本金は事業用としてビジネス活動に使っても構いません。例えば、500万円の資本金で設立した会社の場合、銀行残高が500万円を下回ってはいけないというルールは存在しません。

・すでに口座にある残高500万円はそのままでも証明として使えるか?
 既に500万円の残高があり、新規に振り込む必要がない場合でも、一旦引き出して、再度振り込む必要があります。資本金は定款認証後に振り込むのが原則であり、定款認証後であるかどうかは入金された「日付」で確認されます。最初からお金が入っていたとしても、資本金としてのお金とは判断されず、発起人の個人口座に「定款認証後の日付」で振込みとして資本金相当額が入ってこなければなりません。

・海外送金で資本金を振り込むときの注意点
 本国の家族などから資本金となるお金を海外送金してもらう場合には、海外送金は振込手数料や為替手数料が数千円必要になりますので、資本金額ちょうどではなく、少し多めに送金してもらう必要があります。仮に着金額が、500万円から数千円、1万円でも満たない場合は、経営管理ビザの審査基準を満たさなくなりますので注意が必要です。

(4)不動産(事務所賃貸借契約等)について
・事務所や店舗の契約時の注意点
 経営管理ビザを取得するためには、事務所や店舗が事前に確保されていなければなりません。その際に契約上注意すべき点は、「法人名義で契約すること」「使用目的を事業用」にすることです。それと、法務局への会社設立登記時は、自宅住所を会社住所にしていてもOKですが、経営管理ビザの申請前には、会社住所を自宅以外に変更してから、経営管理ビザの申請を行うことになります。自宅兼事務所では、原則として経営管理ビザは取得できません。ただし、一戸建ての住宅であり、例えば1階は事務所、2階は住宅というように明確に分ける必要があります。出入り口も、1階と2階でそれぞれ分けられていればベストです。ただし、基準適合性で「住宅と事務所は分けなければならない」とありますので、原則は自宅と事務所は別々である必要があります。

・事務所はレンタルオフィスやバーチャルオフィスでもOKか?
 レンタルオフィスの場合は、個室スペースが確保されていることが条件です。つまり「明確な区切りがあること」が必要で、壁やドアで他の部屋から明確に区画されている必要があります。また、看板を出し、標札も掲げている必要がありますので、レンタルオフィスでも、フリーデスクプランでは個室が確保されていませんから、経営管理ビザ取得の要件を満たすことはできません。また、バーチャルオフィスでも個室スペースがありませんので、経営管理ビザ取得の要件は満たしません。

・店舗の契約について
 中華料理店やインド料理店などの飲食店経営や、整体などのマッサージ店を経営するということでも、経営管理ビザは取得できます。そのためには店舗の契約が必要で、店舗物件を確保し、内装を整えた上で店舗内の写真を撮り、出入国在留管理局へ申請書と一緒に提出する必要があります。飲食店であれば、メニュー看板やテーブル、椅子などがきちんとセッティングされていること、マッサージ店であればベッドなどがきちんとセッティングされていることが必要です。

経営管理ビザにおいての店舗系ビジネスの注意点
 経営管理ビザ取得において重要なことは、経営者は「経営をする」ためにビザが許可されるのであって、法律上は現場にたって料理などを行う現業業務は想定されていません。例えば、飲食店においては一人で経営と調理を兼ねて行うことは、許可されない可能性が高いです。全く調理を行うことが禁止されるわけではありませんが、「経営管理ビザ」を申請する経営者とは別に例えば、調理人一人、接客一人を雇用することが許可の条件になります。

友人の会社との共同事務所でも経営管理ビザを取れるか?
 友人の会社と同じ物件に共同事務所として入居する場合や、他社の事務所の一部を間借りすることで経営管理ビザが取れるかどうかですが、原則としては「共同事務所」や「間借り」では、経営管理ビザの取得要件である「事務所」としては認められません。共同事務所や間借りで経営管理ビザを取りたい場合は、事務所がある程度広く、かつ事務所内に内装工事を入れて、壁を作り、そして入口であるドアも別々にすれば、許可が下りる可能性が高くなります。

(5)会社印鑑の種類について
 日本で会社設立する際には、会社の印鑑が必要で、法務局への設立登記申請の前までに会社印鑑を用意する必要があります。中国・韓国・台湾の方々は、印鑑文化があるのですぐにご理解いただけますが、それ以外の国の方々はよくわからないというかたも多いと思いますので、以下に3種類の印鑑についてご説明します。

代表印
 代表印は会社の「実印」になります。代表印は、実印として法務局へ登録します。印鑑登録すると、印鑑カードが法務局から発行され、会社の印鑑証明書がいつでも法務局で取得できるようになります。不動産の売買や賃貸、銀行から融資を受ける等会社としていろいろな契約を行う際には、契約書に実印を押し、印鑑証明書を添付するケースが多くあります。

銀行印
 銀行印は、一般的に銀行に法人口座を作成してもらう際に使用する印鑑です。銀行用に、自動引き落とし契約やその他銀行との取引に使用します。銀行印は会社設立において必ず必要というわけではありません。代表印(実印)を銀行口座の開設に使用されている会社もあります。代表印と銀行印を同じ印鑑にすると、印鑑作成費用の節約になるのと、保管や運用等の手間も楽ですが、万が一紛失してしまうと、再発行手続きが非常に煩雑になります。

角印
 角印は、通称「シャチハタ」と呼ばれており、法務局や銀行への登録も必要ありません。したがって法律的な意味合いは少ない印鑑です。角印の使用方法としては、請求書や見積書に捺印して使用することが多いです。仮に角印が無い場合は、請求書や見積書にも代表印(実印)を押すことになり、請求書や見積書は従業員が作成することを想定すれば、角印があったほうがリスク管理としてはいいと考えます。 

(6)経営管理ビザの申請について
 定款を作成し公証役場での認証、そして資本金の振込み、法務局への設立登記申請、税務署への届出、必要に応じての各種許認可の取得が終われば、最終、出入国在留管理局への経営管理ビザの申請になります。

【経営管理ビザの申請】

経営管理ビザは、社長(代表取締役)以外にも、取締役、支店長、工場長等の事業の経営・管理に関する業務を行う外国人も取得しなければならない対象となります。経営・管理ビザは「日本で貿易、その他の事業の経営を行い、又は当該事業の管理に従事する活動」を行うための在留資格です。そのほとんどが、会社の立上げ~経営をしようとする外国人のかたです。外国人が日本で会社を経営するためには、「経営・管理ビザ」を取得する必要があり、技術・人文知識・国際業務、技能、家族滞在、留学等のビザのままで会社経営することは違法になります。ただし、就労に制限がない「永住者」「永住者の配偶者等」 「定住者」「日本人の配偶者等」の外国人は、「経営・管理ビザ」を取得せずに、日本人と同様に適法に会社経営をすることが可能です。

(1)経営・管理ビザにおける入管法での活動の範囲
 経営・管理ビザを取得することによって可能な活動の範囲は、次の通りです。
・新たに事業の経営を開始したり、その事業の管理に従事する活動
・日本で既に営まれている事業に参画して経営・管理に従事する活動
・既に経営を行っている者に代わって、経営・管理する活動

事業の経営を行う」とは、社長・取締役などの役員としてその経営を行う場合などのことで、重要事項の決定や業務の執行を行います。「事業の管理に従事」とは、支店長や工場長などの管理者として働く場合などのことです。そのほとんどの外国人のかたは、日本で新規に会社設立をするために経営管理ビザを取得しますが、会社を買収したり、既存の会社に役員として参画する場合も取得する必要があります。
経営管理ビザの審査期間については、申請が受理されてから1ヶ月~3ヶ月程度を要します。ただし、審査期間中に出入国在留管理局より、追加書類の提出通知が来たり、出入国在留管理局が忙しい時期には、それ以上の期間を要することもあります。

(2)会社設立前から検討しておく必要がある事項
 前述した内容と重複するところもありますが、経営管理ビザを取得するにあたり、まず最低限の基準がありますので、以下にご説明します。

ⅰ. 店舗系ビジネスを除いて、一人で起業し、経営管理ビザを取得するには、資本金 
  500万円以上を用意する必要があります。
そうか、500万円を用意しないのであれば、最初から従業員を2名以上雇用する必要があります。 
ⅱ. これから日本に進出して、起業を目指している外国人については、会社設立手続き
  から経営管理ビザ申請を進めるため、
あらかじめ日本に協力者を確保しておく必要があります。
ⅲ. 経営管理ビザを取得するためには、自宅を住所にしての法人登記はできません。 
  それと、不動産賃貸借契約は法人名義にし、使用用途は「事業用」にしなければなりません。
ⅳ. 経営管理ビザは、原則として、一つの会社に対して一人しか許可されません。

(3)経営管理ビザの条件
  経営管理ビザの取得条件については、申請人が日本で事業経営を開始しようとする場合と、申請人が日本で事業の管理に従事しようとする場合とに、大きく二つに大別されまます。
ⅰ. 申請人が日本で事業経営を開始しようとする場合
・事業を営むための事業用として使用する施設(事務所・店舗等)が日本に確保されていること
・事業がその経営又は管理に従事する者以外に2人以上の日本に居住する者(日本人、身分系ビザの保有者)で、常勤の職員が従事して営まれる「規模」のものであること

上記の主な基準は以下の通りです。
①事業を行う事業所が日本にあること
「事業所の確保」や「事業の継続性」の認定をするにあたって、日本国内に事業所の確保が必要になります。
②次のいずれかを満たすこと
a. 経営又は管理に従事する者以外に2人以上の常勤の職員がいる「規模」
b. 出資金の総額が、500万円以上
③事業の経営又は管理に実質的に従事すること
④事業の継続性・安定性が見込まれること

総じて許可のポイントとしては、まず、2人以上の常勤の職員を最初から雇用する場合、500万円以上の出資金は要件とはされていませんが、③や④の基準から審査されますので、出資金は多いに越したことはなく、仮に2名の従業員を雇用する場合でも、おおかた300万円ほどの資本金は用意する必要があります。そして、その資本金の出所と送金経路を明確にしておくことが必要で、本人の貯金通帳において証明する場合は、貯金通帳の記帳履歴の写し、親から出してもらう場合は、その送金記録などです。その他は、金銭消費貸借契約書や借用書です。あと、経営管理ビザを更新する際には、直近期末及び直近期の1期前の期がともに債務超過である場合や、2期連続して売上総利益がない場合、事業の継続性があると認められることは困難になり、ビザの更新は難しくなります。

ⅱ. 申請人が日本で事業の管理に従事しようとする場合
事業の経営又は管理について3年以上の経験大学院で経営や管理を専攻した期間を含む)を有すること
・日本人と同等以上の報酬を受けること(本人の500万円以上の出資は不要です)

ⅲ. 外国人の会社設立と経営管理ビザの関係
  外国人が日本で会社設立すること(法務局にて)と、経営管理ビザを取得すること(出入国在留管理局にて)は、全く別の手続きであり、さらに別の審査があります。つまり、会社設立は登記という性質上、必ず設立はできます。しかし、経営管理ビザが取れるかどうかは、出入国在留管理局が決定するものであり、こちらは必ず取れるのかというと、しっかり事前に準備をして申請しないと、不許可になることもあるということです。

(4)経営管理ビザ申請における主要な申請パターンについて
ⅰ. 代表取締役として海外から招聘する(在留資格認定証明書交付申請)
  海外に居住している外国人が、日本で会社経営する(代表取締役になる)パターンと、すでに存在している会社の役員や、子会社やグループ会社等の社長(いわゆる雇われ社長)として日本に招聘されるパターンに分かれます。
日本で会社経営する…500万円以上を出資するか、500万円以上の出資額に満たなければ、最初から従業員を2名以上雇用する、あとは、出資金の出所の証明や事務所の確保、詳細な事業計画書の作成です。

ⅱ. 既にある日本の会社の役員に就任する(在留資格認定証明書交付申請)
 金銭出資は必要ありませんが、3年以上の会社の経験や管理の経験を詳細に証明できることが必要です。それと既存の会社の経営状況に問題がないことが必要です。

・数次の短期滞在ビザで日本で会社経営はできるか
  商用目的での数次の短期滞在ビザ(有効期間は、1年・3年・5年・10年、1回の滞在期間は、15日・30日・90日)を所持していると、ある程度は日本と海外を自由に行き来することは可能ですが、あくまでも短期滞在ビザですので、日本で活動できる範囲には制限があります。短期滞在ビザでできる活動は、商談・契約・会議・業務連絡等に限定されます。
ⅲ.  就労ビザ技術・人文知識・国際業務などから経営管理ビザへの変更
  (在留資格変更許可申請)
これまで日本で会社員として活動されてきた外国人のかたが、起業を目指す場合、経営管理ビザを取得する必要があります。技術・人文知識・国際業務などの就労ビザのままで、会社経営をすることは違法となります。会社を辞めた後、在留期間が1年~2年残っているからといって、就労ビザの状態で会社を興すかたがいらっしゃいますが、この状態で11~2年後に経営管理ビザへの変更申請をしても、それまでの不法就労状態を指摘され、不許可になり、現在の就労ビザまで取消しになる可能性があります。ですので、会社員から起業して会社経営を目指す場合は、速やかに経営管理ビザを取得しなければなりません。進め方は前述の通り、公証役場での定款認証・出資金の振込み・法務局での会社設立手続きを終えてからの経営管理ビザ申請となります。ビザ申請においても、500万円以上出資するか、500万円に満たない場合は2名以上の従業員を雇用する、出資金の出所の証明、事業所の確保、事業計画書の作成が必要です。

ⅳ.  就労ビザ技能から経営管理ビザへの変更調理師(在留資格変更許可申請)
  現在、調理師としてレストラン等に勤務されている外国人のかたが、独立して外国料理店を経営したい場合は、技能ビザから経営管理ビザへ変更する必要があります。
基本的な進め方は前述の通りですが、外国料理店を経営する場合、500万円以上を出資して「一人」で経営するという申請では「経営者自身が厨房で調理を常時おこなう」と出入国在留管理局に思料され、不許可になります。経営者が厨房で少しでも調理をすると違法になる、とまではなりませんが、経営活動の一環で付属的な業務として厨房で調理をおこなうという程度にしておく必要があります。経営管理ビザはあくまで、「事業の経営をする」ビザになり、現場労働を行うことは想定されていません。  
500万円以上を出資したとしても、必ず一人は、調理人を雇用する必要があります。できればホール係として、もう一人雇用すれば「接客要員も確保されている」として、外国料理店を立ち上げるうえでの経営管理ビザ審査においては、かなり有利になります。注意点として、500万円以上出資した場合、調理人として雇用する者は、「技能ビザ」を所持あるいは、海外から技能ビザ取得を目指して招聘する等「技能ビザ所持」一人以上でもOKです。500万円出資できない場合は「日本人又は身分系ビザの外国人である常勤二人以上の雇用」は必須で、それにプラスで「技能ビザ所持」一人以上を雇用することは問題ありません。それと、当然ですが事業所については、店舗の確保が必要になり、店舗の外には看板、店舗内にはテーブル・椅子・メニュー等がきちんとセッティングされている必要があります。
・飲食店等には多い「個人事業主」として経営管理ビザは取得できるか
 個人事業主でも経営管理ビザ取得は可能です。ただし基本的には、在留資格変更許可申請に限られます。就労ビザ(技能)→経営管理ビザということです。個人事業主でも経営管理ビザ取得のための要件は同じで、基本的に500万円以上の出資が必要になります。ここで問題になるのが、500万円以上の出資の証明です。個人事業主は税務署に「個人事業主の開業届」を提出するだけでなれてしまうので、会社設立のように資本金という概念がありません。ですので、個人事業主の場合は個人の通帳に500万円を入れても意味が無りません。個人事業主として経営管理ビザを取得するためには、実際に500万円を使い切って投資したという証明として、店舗の契約証明・内装・備品の購入等における領収書等を出入国在留管理局に提出する必要があります。

ⅴ. 留学ビザから経営管理ビザへの変更(在留資格変更許可申請)
  大学生・大学院生・専門学校生・日本語学校生が卒業後に就職をしないで、経営管理ビザを取得することは可能です。経営管理ビザには学歴要件(大学卒業要件等)がありませんので、審査はより厳しくなりますが高校卒業でも可能です。この場合でも前述と同様に、会社設立手続きが前提として必要になりますが、留学生の場合に注意しなければならないのが、出資金の出所です。出資金500万円をどのように準備したのかの証明が必要になりますが、ます、留学ビザは就労できないビザですので、資格外活動許可を得てアルバイトをして貯めたお金は「資本金」としては認められません。そのため現実的には両親などから資本金を援助してもらうことがおおくなりますが、その送金の流れを証明できる書類の提出が必要になります。そして、留学ビザから経営管理ビザへの変更の場合は、社会人経験がないことを理由に審査が厳しい傾向にありますので、より綿密な事業計画書を作成することにより、経営を維持できる根拠を具体的に説明する必要があります。

ⅵ. 家族滞在ビザから経営管理ビザへの変更(在留資格変更許可申請)
  会社員の外国人の配偶者は「家族滞在」ビザです。家族滞在ビザの妻や夫が、日本で会社を興してビジネスを始めたい場合、当然ですが家族滞在ビザのままでは起業はできず、経営管理ビザに変更する必要があります。注意点は、家族滞在ビザでの資格外活動において、アルバイトの就業時間が週28時間を超えていると、経営管理ビザへの変更が不許可になる可能性が高くなります。万が一、家族滞在→経営管理が不許可になっても、その方が配偶者と離婚していなければ、そのまま家族滞在で継続できることが多いです。さらにもし、経営管理ビザへの変更が不許可になり、その時点で家族滞在の在留期限が過ぎていたらどうなるか?ですが、「特定活動」ビザになってしまいますが、30日以内に家族滞在ビザへの変更が可能です。

(5)資本金(出資金)500万円の出所証明について
  経営管理ビザはその多くが、外国人一人で500万円を出資して、会社を起業するパターンが多いです。そしてこの500万円の出所、つまりどのようにお金を集めたのかを詳細に問われますので、その証明も重要になります。日本人が会社をつくる場合、資本金の出所などは一切問われず、外国人が会社をつくる場合でも「法務局」では一切問われません。しかし、経営管理ビザの審査の申請にあたっては、「出入国在留管理局」にて資本金の出所が問われます。何の説明もすることなく、500万円が銀行口座にある日に振り込まれていたとしても、自分で貯めたのか、誰かから借りたのか、誰かからもらったのかが分かりません。さらに、自分で貯めたならどうやって貯めたのか、誰かから借りたなら金銭消費貸借契約書はあるのか、その契約内容はどういった内容か、誰かからもらったなら誰からもらったのか、どうして500万円という大金をもらえたのか等、文書や立証資料で証明していく必要があります。それに加えて、お金の形成過程や流れも重要になります。自分で貯めたなら、銀行の通帳で貯まっていく過程が証明できるのが理想です。家の貯金箱で貯めたという、いわゆるタンス預金では証明にはなりません。あと親から借りた場合は、親は親で本当に500万円という大金を持っていたのかという観点から、親の銀行口座の明細の提出を求められることもあります。
・親や親族から資本金を借りる時の注意点
  親や親族からお金を借りる場合でも、金銭消費貸借契約書を交わすことがベストです。あと、本国からの送金記録や、親や親族との関係を公的書類で証明するよう、出入国在留管理局から求められることも多々あります。
・日本への資本金の持ち込み・送金方法について
  資本金500万円を日本へどうやって持ってくるかについては、いくつかの選択肢があります。もし、現金で持ち込む場合は、100万円以上は税関へ申告しなければなりませんので、税関に申告した証明書が必要です。100万円以上を現金で持ち込んだにもかかわらず税関に申告していない場合は、違法となりますので、経営管理ビザ申請においては非常に不利に働きます。銀行での海外送金についても、年間5万ドルまでという制限がある場合があり、円高などでその時のレートによっては、5万ドルを送っても500万円に満たないケースもありますので注意が必要です。結論として、500万円の出所証明は非常に重要になりますので、会社設立前からその証明の仕方をどのようにするのかをよく検討しておく必要があります。

(6)事業計画書について
  経営管理ビザ取得のためには、「事業計画書」の提出が必須になっています。その中身が許可・不許可の審査項目の一つになっていますので、そのアピールポイントとしては、まず主要な要件である、
ⅰ. 日本に居住する2人以上のフルタイムを雇用する「規模」のビジネス
ⅱ. 資本金が500万円以上であること
ⅲ. 前記あるいはに準ずる規模であること

先程も説明しており重複しますが、実際には500万円以上出資すれば2名以上雇用する必要はありませんが、又はについて、事業計画書の中で詳細に説明する必要があります。さらに、出入国在留管理局が経営管理ビザを審査するにあたりポイントとしているのは、「ビジネスの実態があるかどうか」です。事業計画書では、事業概要・経営理念・代表者経歴・組織体制サービスの特徴とプラン・価格設定・取引先等・集客方法・今後の人員計画・今後1年間の損益計算書等を項目ごとにまとめていき、審査しているビジネスは当然実態もあり、営業活動の計画性、売上の見通しもついており、安定性と継続性があるのことを出入国在留管理局に理解してもらう必要があります。経営管理ビザは学歴や実務経験が不要で、お金さえあれば取れてしまうビザです。ですので、すぐに倒産してしまいそうな事業計画書やペーパーカンパニーに対しては、経営管理ビザを許可しないよう厳しく審査しています。
・経営管理ビザにおいて、在留資格更新許可申請時においてのポイント
  経営管理ビザにおいて、初回の申請では「1年」しかでないのが通常です。1年後の更新時に改めて審査が入り、確定申告書一式(貸借対照表・損益計算書)の提出が求められ、決算結果と事業計画書と実際の1年間の動きはどうだったのかを確認されます。
1年目が赤字決算だったからといって、更新の不許可が決定されるわけではありません。2年目はどのように黒字にもっていくのかなど、再度事業計画書を作成し説明をしなければなりません。債務超過の場合は、単に事業計画書の提出だけでは足りず、公認会計士や中小企業診断士などによる評価書面の提出も必要になってきます。

(7)経営者の経歴について
  経営管理ビザ申請において、申請人の実務経歴については、日本の企業の役員になる場合は、母国の会社において3年以上の経験が必要ですが、日本で会社を起業して経営する場合、実務経験や学歴についても一切不要です。ただし、事業計画書において経営の経験が無くても事業を成り立たせることができることを客観的に説明する必要があります。あと、年齢についてですが、60歳以上のかたにおいて、特に海外からの招聘の場合は、入管法上では実務経験は不要といっても、出入国在留管理局からは、その歳で事業の経験もなく、言葉もわからない日本でビジネスを成り立たせることは不可能ではないか?と捉えられ、母国での数年間の経営経験を要求されることが多いので注意が必要です。

●永住権

【永住権の基礎知識】

(1)永住権とは?
 「永住権」とは、もともとの国籍のまま(外国籍のまま)で日本に住み続けることができる権利です。永住申請は既に日本に滞在していて、現在のビザ(在留資格)を変更しようとする外国人のかただけが可能ですので、初めて来日すると同時に永住申請をすることはできません。永住許可を受けた外国人のかたは「永住者」のビザで日本に在留することになります。永住権を取得すると、在留活動や在留期間のいずれも制限されませんし、日本における社会的な信用があがり、住宅ローンが組みやすくなったりとメリットがあります。そのため、他の就労ビザ等よりも審査に慎重さが加わるため、許可を得る難易度は上がります。

(2)永住権と帰化の違いは?
 日本の永住権である永住ビザを取るのと、日本国籍を取って日本人になる帰化との違いを比較してみたいと思います。

 
公務員になれるか?
在留資格
日本のパスポートの取得
選挙権被選挙権国籍
永住権必要母国
帰化不要日本
 
・外国人の方は原則、公務員になれません。ただ、一部の地方公共団体では条例で在留外国人の方を地方公務員として採用しているところもあります。(例:奈良市) 帰化をすると、日本人と同様に、国家公務員でもなれるようになります。
・帰化をすると、ビザ(在留資格)が不要になります。
・帰化をすると、日本のパスポートが取得でき、ほとんどの国へノービザで渡航可能になります。海外旅行や海外出張へ行きやすくなります。ただ、ある中国人の方に聞いた話ですが、帰化をして日本人になると、母国の空港での入国手続きが半端なく時間がかかるようになるとのことです。
・帰化をすると、選挙権が発生します。現在、国政選挙では在留外国人の方の選挙権はありませんが、地方自治体では「住民投票」のみにおいて、在留外国人の方の投票を認めた実績のあるところもあります。(例:岸和田市・大東市・豊中市・阪南市)
・帰化をすると、被選挙権が発生します。国会議員等になりたければ、立候補することができます。
・帰化をすると、母国の国籍を失います。日本は二重国籍を認めていません。
 
(3)永住権を取得するということは?
外国人のまま、母国の国籍を失わずに日本に安定して滞在し続けることができます。
ビザ(在留資格)の更新が不要になります。永住権は「無期限」の在留資格です。
在留活動(仕事)に制限が無くなります。一般の就労ビザが許可されないような職業
 (肉体労働・水商売など)でも、法律に反しない限りは、どのような職業にでも就くことが可能になります。
・住宅ローンが組みやすくなります。
失業や離婚をしても、ビザ(在留資格)が失われません。一般の就労ビザでは一定期間を過ぎればビザの取消し対象になります。就労ビザでは会社を離職した場合、14日以内に入管へ届出る必要があり、離職から3ヶ月以内を目途に次の就労先へ就く必要があります。日本人の配偶者でも、離婚後14日以内に入管へ届出る必要があり、離婚後6ヶ月以内を目途に次の在留資格に切り替える必要があります。
配偶者や子供の永住申請が容易になります。「永住者の配偶者」や「永住者の子」が永住申請をする時に一部審査要件が緩和されます。
 
【在留資格別の永住権の要件】
 
(1)就労系ビザ(技術・人文知識・国際業務)からの永住権申請について
 就労ビザの中でも、最も多くをしめる「技術・人文知識・国際業務」から永住権を許可される要件を以下にご説明します。
①要件:素行が善良であること
 表現が抽象的なので、具体的には以下のような内容になります。
ⅰ. 日本国の法令に違反して、懲役・禁固又は罰金に処せられたことが無いこと
 上記の刑に処罰されたとしても、一定の期間が経過すれば許可になる可能性があります。一定の期間とは、懲役と禁固の場合は刑務所から出所後10年を経過(執行猶予が付いている場合は、猶予期間が終了してから5年を経過)すること、罰金・拘留・科料の場合は支払いを終えてから5年を経過することで、日本国の法令に違反して処罰されたものとして取り扱われません。
 
ⅱ. 日常生活又は社会生活において違法行為又は風紀を乱す行為を繰返し行っていない
 これは、懲役や罰金等にまでは該当しないような、軽微な違反で、かつ繰返し行っていない者が該当します。例えば、車の運転による違反が一番多いようです。駐車禁止違反や一時停止違反、携帯電話使用違反等が多いと思われます。そして最近では、自転車での違反行為でもこの事例に当てはまっていることもあるとのことです。
一般的には、過去5年間で5回以上行っていない場合がセーフの基準ですが、飲酒運転や無免許運転等は明らかな故意となり、軽微な違反とはならず、1回でも違法行為又は風紀を乱す行為を繰返し行っている者として取り扱われます。
また、結婚している方は、配偶者や子供が家族滞在の在留資格を有している場合も注意が必要になります。「家族滞在」というビザは、原則としては就労できませんが「資格外活動許可」を得れば、週に28時間以内であれば働くことができます。しかし、週に28時間を超えて働いている場合は、違法行為又は風紀を乱す行為を繰返し行っている者になります。そして、永住申請をしようとしている技術・人文知識・国際業務ビザを有している本人は、監督不行届として、違法行為又は風紀を乱す行為を繰返し行っている者になります。この場合は、家族滞在ビザの者の働いている時間を適正(週28時間以内)にしてから、5年間の経過が必要になります。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 これは独立生計要件といって、「日常生活において公共の負担になっておらず、その有する資産又は技能等から見て、将来において安定した生活が見込まれること」とされています。具体的な内容を言いますと、年収が過去5年間にさかのぼって300万円以上あるかどうかが重要になります。ちなみに、永住申請の本人が主婦で働いていない場合は、配偶者が独立生計要件を満たせば本人が無職で働いていない場合でも永住申請が許可される場合があります。独立生計要件の注意点は以下の二点があります。
ⅰ. 転職をしている場合
 転職によって給料がアップしている場合(キャリアアップ転職)は問題になることはありませんが、転職後の給与や職務上の地位が同水準又は下がっているような場合では、安定した生活とまではいえないと判断されます。ということで、転職した会社で1年以上経過してから永住申請することをおすすめ致します。
ⅱ. 申請人本人の扶養人数
 扶養人数が多ければ、それだけ生活に必要なお金がより多く必要になります。しかも扶養人数が多ければ、所得税や住民税が低くなり、税金の面では日本に貢献していないということになります。扶養人数が1人増えると、年収は70~80万円をプラスして試算する必要があります。つまり、申請人本人に配偶者1名子供1名の場合は、440~460万円の年収実績が5年間必要ということです。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
 これは、国益適合要件といって、具体的には以下のような内容になります。
ⅰ. 原則として、引続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格を持って5年以上日本に在留していること
これは日本継続在留要件といい、引続き10年以上日本に住んでいて、そのうちの直近5年以上は就労系の在留資格、今回でいえば技術・人文知識・国際業務のビザで働いていることが必要になります。この5年の中で転職していても問題はありませんが(キャリアアップ転職がベスト)、アルバイトとして働いていてもそれは就労期間には含まれません
そして、「引続き」とは在留資格が途切れることなく日本に在留し続けていることを意味します。過去に中・長期で日本から出国している場合には、確認が必要です。年間で100日以上又は1回の出国で3ヶ月以上の出国がある場合には「引続き」と判断されず、日本における生活の基盤が無いと判断される可能性が高いです。例えば、海外出張等の場合で前述の期間に該当する場合は、出国の理由を合理的かつ説得的に説明することが必要ですし、加えて日本における資産状況や家族の状況も説明する必要があります。その説明に具体的な信憑性があれば、その他の事情との総合判断になりますが、許可あれる可能性も出てくるでしょう。
そして、直近の5年以上の就労資格をもって日本に在留していることとは、在留資格にあった活動を継続していることを意味します。例えば、3年間会社で勤務した後、1年間転職活動等で無職の期間が続き、その後に新しい会社に就職して2年間勤務しているような場合では、在留資格にあった活動を継続していませんので、要件は満たしていないことになります。この場合には、新しい会社に就職して5年経過することで、直近の5年以上が在留資格に合った活動をしているとして、要件を満たすことになります。
 
ⅱ. 納税義務等公的義務を履行していること
 要するにこれは、税金をきちんと支払っているかどうかということです。税金というのは、住民税や国民健康保険税、国民年金等になります。会社員では給料から天引きされている方がほとんどだと思いますが、フリーランスの方や、会社員でも中には給料から天引きされていなくて、ご自身で支払っておられる方もいらっしゃるかと思います。そのような方は注意が必要で、最近の永住権の審査においては、各種税金を支払っていることは当然で、かつ、過去2年間において納期限を守って支払いをしているかどうかまでチェックされます。納期限を守って支払いをしているかどうかを証明するには、領収書を保管しておくことです。銀行口座からの自動引落しをされている方は、銀行通帳の記帳を忘れずに行うことが重要です。合計記帳等でまとめて記帳されてしまった場合には、銀行からの明細を取得することで証明が可能になります。
 
ⅲ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
 これは、法律上は「5年」が最長の在留期間となるのですが、今のところは、在留期間が「3年」で許可されてている場合は、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱われます。
 
ⅳ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
 これは具体的には、麻薬・大麻・覚せい剤等のことを意味します。
 
ⅴ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
 これは「国益適合要件」といい、①素行が善良であること(素行善良要件)と内容は同じになります。重ねて謳われているということは、それほど重要であるということです。
 
④要件:身元保証人がいること
 永住許可申請をする場合は、必ず「身元保証人」を用意しなければなりません。
永住申請において身元保証人になれる人は、日本人か、外国人の場合は「永住者」の方で、安定した収入があり、納税をきちんとしている方である必要があります。身元保証人の年収は、およそ300万円以上あることが目安とされています。社会保険に加入しているかどうかは審査対象外ですが、納税はきちんとしていることが必要です。納期限も今のところは審査対象外です。就労ビザで在留中の方は、勤務先の社長や上司、学生時代の先生にお願いしていることが多いようです。
この「身元保証人」は、よく「保証人にはなるな」といわれる連帯保証人の内容とは違います。基本的に経済的な賠償は含まれていません。入管法上の身元保証人の保証内容は、滞在費・帰国費用・法令遵守の3つで、これについては道義的責任であり、法律的な責任は負いません。仮に当該外国人に問題が起こったとしても、入管から「滞在費と帰国費用を支払え!」とはなりませんし、本人が犯罪を犯したとしても、「なぜ法令遵守させなかったのか」とはなりません。つまり万が一、当該外国人が法律違反をしても、身元保証人が罰則を受けたり、責任を追及されることはありません。
 
(2)就労系ビザ(経営・管理)からの永住権申請について
 日本で起業している外国人の中で、最も多い在留資格は「経営・管理」ビザであると思います。技術・人文知識・国際業務と重なる部分は省略し、経営者ならではの要件を重点的にご説明します。
①要件:素行が善良であること
 これは、技術・人文知識・国際業務の内容と重複しますので、省略します。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 これも、技術・人文知識・国際業務の内容と重なる部分は省略し、新たに経営者として気を付ける必要がある箇所をご説明します。
「将来において安定した生活が見込まれること」に関しては、経営する会社の安定性と継続性が重要になります。黒字であっても借入金が多く、債務超過に陥っている場合などは、この独立生計要件を満たしていないとされる可能性が高いです。それと、経営者の方の給料(役員報酬)は、最低でも300万円以上に設定しましょう。年収が過去5年間にさかのぼって300万円以上あるかどうかも重要になります。
ⅰ. 会社員からの独立起業
 前職が会社員であって、独立起業をした場合、経営者として1年くらいですと安定性に問題があることが多く、不許可リスクが高いです。経営・管理ビザを取得して経営を開始し、黒字化が最低でも2年続いてから永住申請をすることをお勧めします。
ⅱ. 扶養人数
 これも、技術・人文知識・国際業務の内容と同じです。扶養人数が1人ふえれば、年収につういては70~80万円プラスして考える必要があります。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ⅰ. 原則として、引続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格を持って5年以上日本
 に在留していること
 日本継続在留要件においても、技術・人文知識・国際業務と同様に直近5年以上、経営・管理の在留資格で経営していることがベストです。。技術・人文知識・国際業務で3年、経営・管理で2年でも、独立生計要件がクリアできれば許可の可能性は高いです。あと例えば、3年間会社を経営したあと、1年間休業等で無職の期間が続き、その後に経営活動を再開して2年間経営しているような場合では、在留資格にあった活動を継続していませんので、要件を満たしていないことになります。
そしてここでも「引続き」の条件があり、10年間のうち、年間で100日以上の出国又は1回の出国が3ヶ月以上ある場合には、「引続き」とは判断されず、日本における生活の基盤がないと判断される可能性が高いです。
 
ⅱ. 納税義務等公的義務を履行していること
 新たに経営者として気を付けることは、会社としての税金(法人税・事業税・消費税・法人都道府県税・市区町村民税等)と、個人としての税金(住民税・所得税)の両方になります。それと、ご自身の会社が各種保険適用(加入)をしていることが必要です。法人経営者であるならば、従業員を雇用していなくても加入義務がありますし、個人事業主であれば、常勤の従業員を5名以上雇用していれば加入義務が発生します。
厚生年金や健康保険、雇用保険、労働保険等に加入しており、各種、納期限を守って納税をしていることが重要になります。
 
ⅲ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
ⅳ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ⅴ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
        以上においても、技術・人文知識・国際業務の内容と同じです。
 
④要件:身元保証人がいること
 これも、技術・人文知識・国際業務の内容と同じになります。経営・管理ビザでは、経営者仲間に依頼されるかたも多いようです。同様に、身元保証人の責任をしっかりと理解してもらい、よく誤解される連帯保証人とは違うことを丁寧に説明することです。
 
(3)就労系ビザ(高度専門職)からの永住権申請について
 2017年4月に法務省令が改正され、日本版高度外国人材グリーンカードが始まり、最短1~3年で永住権が取得できるようになりました。技術・人文知識・国際業務等の内容と重複するところは省略し、高度専門職ならではの箇所を重点的にご説明します。
①要件:素行が善良であること
 これは、技術・人文知識・国際業務等の内容と重複しますので、省略します。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 これも、技術・人文知識・国際業務の内容と重なる部分は省略し、高度専門職として気を付ける必要がある箇所をご説明します。
ⅰ. 転職
 高度専門職の場合は、転職のたびに在留資格変更許可申請をする必要があります。そして転職後の給与や職務上の地位が同水準か、下がってしまうような場合では、安定した生活とはまだいえないと判断されることが多いので、最低でも転職後1年以上経過後に永住申請することをお勧めします。
ⅱ. 扶養人数
 これは重複しますが、扶養人数が1人増えるごとに、年収は70~80万円プラスで考える必要があります。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
 申請日より3年前における規定ポイントの高低により、2パターンに分かれます。
ⅰ. 高度人材外国人として3年以上継続して日本に在留していること、又は3年以上滞在している者で、永住許可申請日より3年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、70点以上80点未満の点数を有していたことが認められるもの。
 これはポイント計算表で70点以上80点未満の場合の日本継続在留要件となり、2つのパターンを以下に分けてご説明します。
イ:3年以上継続して「高度人材外国人」として日本に住んでいる人
 高度専門職のビザが許可されている者は当然この要件に当てはまりますが、中には「特定活動」というビザを許可されている方もいるかと思います。この特定活動は、まだ高度専門職のビザが無かった時に、高度人材外国人として認められた者に与えられたビザになります。パスポートに「指定書」というのが貼付されています。
ロ:3年以上滞在している者で、永住許可申請日より3年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、70点以上80点未満の点数を有していたことが認められるもの。
 現在持っているビザ(在留資格)が高度専門職あるいは特定活動のビザでもない方が対象になります。ポイント計算表で、70点以上80点未満の点数が3年前から満たしていたという方が当てはまります。つまり実態として、高度人材外国人であればよく、高度専門職や特定活動のビザを得ることまでは要求されていません。例えば、現在は「技術・人文知識国際業務」のビザで在留中でも、ポイント計算の結果、3年以上前から70点以上80点未満のポイントを満たしている場合には、高度人材外国人として3年以上という要件に当てはまります
 
ⅱ. 高度人材外国人として1年以上継続して日本に在留していること、又は1年以上滞在している者で、永住許可申請日より1年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、80点以上の点数を有していたことが認められるもの。
 これはポイント計算表で80点以上の場合の日本継続在留要件となり、2つのパターンを以下に分けてご説明します。
イ:1年以上継続して「高度人材外国人」として日本に住んでいる人
 前述ⅰのイの内容と重複しますので、省略します。
ロ:1年以上滞在している者で、永住許可申請日より1年前の時点を基準として、高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に、80点以上の点数を有していたことが認められるもの。
 現在持っているビザ(在留資格)が高度専門職あるいは特定活動のビザでもない方が対象になります。ポイント計算表で、80点以上の点数が1年前から満たしていたという方が当てはまります。つまり実態として、高度人材外国人であればよく、高度専門職や特定活動のビザを得ることまでは要求されていません。例えば、現在は「技術・人文知識・国際業務」のビザで在留中でも、ポイント計算の結果、1年以上前から80点以上のポイントを満たしている場合には、高度人材外国人として1年以上という要件に当てはまります
 
ⅲ. 納税義務等公的義務を履行していること
 会社員、又は会社経営者として、納期限を守って各種税金を支払っていることが重要です。特に、住民税・国民健康保険税・国民年金は納期限を守っていなければ、不許可リスクが高いです。確認が必要な期間については、ポイントが「70点以上80点未満」の方は、直近の2年間となり、「80点以上」の方は直近の1年間となります。
 
ⅳ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
 高度専門職のビザを許可された方は、一律に入管法上において最長の期間(現時点では5年)が許可されますので、そのまま最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱われます。
ⅴ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ⅵ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
 以上2点は、技術・人文知識・国際業務の内容と同じです。
 
④要件:身元保証人がいること
 これも、技術・人文知識・国際業務等の内容と同じになります。同様に、身元保証人の責任をしっかりと理解してもらい、よく誤解される連帯保証人とは違うことを丁寧に説明することです。
 
(4)身分系ビザ(日本人の配偶者等)からの永住権申請について
 在留資格「日本人の配偶者等」を持っている人とは、文字通り日本人と結婚した外国人配偶者の方が一番多く当てはまります。その他には、日本人の子供も含みます。出生した時に両親のいずれかが日本人であれば、日本国籍を取得しますが、その後のその子が日本国籍を離脱し外国人となった場合も該当します。日本人の子供には、特別養子も含みます。
①要件:素行が善良であること
 これは技術・人文知識・国際業務等、就労ビザの内容と重複しますので、省略します。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 日本人の配偶者等のビザを有している方は、この独立生計要件については、表向きには要件としてはありません。しかし、永住審査の実態としては、年収にして300万円以上
(扶養人数が1人増えると70~80万円プラス)を満たしていない場合は、不許可にされるリスクが高いです。しかし、就労系ビザのような過去5年間の年収が300万円以上あったかまでは要求されておらず、直近1年間が300万円以上であれば、許可の可能性は高いです。ただ、複数年継続されていたほうが許可の可能性を高めることは言うまでもありません。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ⅰ. 日本に1年以上(婚姻から3年以上)引続き在留していること
 これは日本継続在留要件といい、日本人と結婚した外国人配偶者の場合と、日本人の実子又は特別養子の場合の2種類のパターンがあります。
イ:日本人と結婚した配偶者の場合
 実態を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引続き1年以上日本に在留していることが必要です。「実態を伴った」婚姻である必要がありますので、婚姻していても別居していたような場合は実態が無いと判断されてしまいます。しかし例えば、仕事の都合上で単身赴任をして別居に至っているが、週に1回は配偶者のいる家に帰っているような、別居の理由に合理性があるケースでは、その理由書を添えて丁寧に説明すれば実態が無いと判断されることはありません。また、日本人との婚姻から3年以上経過していれば、日本には1年以上の居住でOKです。例えば、海外で2年以上の婚姻生活、そして日本に来て1年以上の婚姻生活でもいいということです。さらに、これは実体法上の身分関係として、日本人の配偶者であればよく、「日本人の配偶者等」のビザ(在留資格)を得ていることまでは要求されていません。例えば日本人と結婚しているけれども、現在は「技術・人文知識・国際業務」のビザで日本に在留している方でも、実態を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引続き1年以上日本に在留していれば、この要件に当てはまります。
ロ:日本人の実子又は特別養子の場合
 引続き1年以上日本に在留していることが必要です。
 
ⅱ. 納税義務等公的義務を履行していること
 これは、就労系ビザと要件は同じですので省略します。各種税金を支払っていること当然で、納期限を守って支払いをしているかまで、審査の対象になります。
 
ⅲ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
ⅳ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ⅴ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
以上においても、就労系ビザの内容と同じです。
 
④要件:身元保証人がいること
 これも内容は就労系ビザと同じですが、日本人と婚姻している配偶者や日本人の実子として在留している外国人の方は、通常は配偶者(日本人)や親(日本人)にお願いすることになります。前述したように、くれぐれも身元保証人の保証内容をよく理解してもらうことが重要です。仮に、配偶者(日本人)に対してしっかりと説明したにもかかわらず、協力してもらえない場合は、実態のある婚姻が継続しているとは判断されず、不許可となる可能性が高くなります。
・外国人配偶者が主婦などで要件を満たすことができない場合
 日本人の配偶者等のビザを有している方は、主婦などで無収入又は扶養の範囲内での収入によって日本人の配偶者側の扶養に入っている方もいらっしゃるかと思います。つまり、外国人配偶者個人として、各種の納税関係の義務を履行していることの要件を満たせない場合もあります。その場合には、日本人配偶者側がその要件を満たしていなければなりません。日本人配偶者側が会社員で社会保険に加入していれば問題はありませんが、自営業等でご自身で支払っている方は注意が必要です。前述の通り、支払っていることは当然で、納期限を守って支払いをしていることが重要になります。
在留特別許可や上陸特別許可を受けている場合
 日本人の配偶者の方で、過去にオーバーステイや上陸拒否期間中の入国許可等で、在留特別許可や上陸特別許可をもらっている方もいらっしゃいます。その場合には、通常の日本人の配偶者ビザの要件を満たしいても許可されません。具体的には、婚姻が3年以上続いていても日本在留歴は1年では無く、在留特別許可又は上陸特別許可をもらった日より3年以上の日本在留歴が求められます。その他にも、素行善良要件や独立生計要件にしても、通常よりかは厳しく審査される傾向はあります。
 
(5)身分系ビザ(永住者の配偶者等)からの永住権申請について
 日本に在留している方で「永住者の配偶者等」を持っている方とは、文字通り永住者又は特別永住者(在日韓国朝鮮人)と結婚した外国人の方が一番多く当てはまります。これ以外には、永住者又は特別永住者の子供や特別養子もこの在留資格を取得しています。
 
①要件:素行が善良であること
 これは技術・人文知識・国際業務等、就労ビザの内容と重複しますので、省略します。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 永住者の配偶者等のビザを有している方は、この独立生計要件については、表向きには要件としてはありません。しかし、永住審査の実態としては、年収にして300万円以上
(扶養人数が1人増えると70~80万円プラス)を満たしていない場合は、不許可にされるリスクが高いです。しかし、就労系ビザのような過去5年間の年収が300万円以上あったかまでは要求されておらず、直近1年間が300万円以上であれば、許可の可能性は高いです。ただ、複数年継続されていたほうが許可の可能性を高めることは言うまでもありません。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ⅰ. 日本に1年以上(婚姻から3年以上)引続き在留していること
 これは日本継続在留要件といい、永住者又は特別永住者と結婚した外国人配偶者の場合と、永住者又は特別永住者の実子又は特別養子の場合の2種類のパターンがあります。
イ:永住者又は特別永住者と結婚した配偶者の場合
 実態を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引続き1年以上日本に在留していることが必要です。前述と同様に、別居している場合にはその別居の理由に合理性がなければ、実態があるとは判断してもらえません。また、永住者又は特別永住者との婚姻から3年以上経過していれば、日本には1年以上の居住でOKです。例えば、海外で2年以上の婚姻生活、そして日本に来て1年以上の婚姻生活でもいいということです。さらに、これは実体法上の身分関係として、永住者又は特別永住者の配偶者であればよく、「永住者の配偶者等」のビザ(在留資格)を得ていることまでは要求されていません。例えば永住者又は特別永住者と結婚しているけれども、現在は「技術・人文知識・国際業務」のビザで日本に在留している方でも、実態を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引続き1年以上日本に在留していれば、この要件に当てはまります。あと、在留特別許可や上陸特別許可をもらっている方の場合は、前述した内容と同様で、最低3年以上の日本在留歴が求められます。
ロ:永住者又は特別永住者の実子又は特別養子の場合
 引続き1年以上日本に在留していることが必要です。
 
ⅱ. 納税義務等公的義務を履行していること
 これは、就労系ビザと要件は同じですので省略します。各種税金を支払っていること当然で、納期限を守って支払いをしているかまで、審査の対象になります。
 
ⅲ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
ⅳ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ⅴ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
以上においても、就労系ビザの内容と同じです。
 
④要件:身元保証人がいること
  これも内容は就労系ビザと同じですが、永住者又は特別永住者と婚姻している配偶者や永住者又は特別永住者の実子として在留している外国人の方は、通常は配偶者(永住者又は特別永住者)や親(永住者又は特別永住者)にお願いすることになります。前述したように、くれぐれも身元保証人の保証内容をよく理解してもらうことが重要です。仮に、配偶者(永住者又は特別永住者)に対してしっかりと説明したにもかかわらず、協力してもらえない場合は、実態のある婚姻が継続しているとは判断されず、不許可となる可能性が高くなります。
 
(6)身分系ビザ(定住者)からの永住権申請について
 日本に在留している方で、「定住者」を持っている方とは、外国人の連れ子として日本に来た方や、以前は日本人と結婚していたが、離婚や死別をされ、その後に定住者のビザを取得された方、あとは日系ブラジル人の方等もこのビザを持っています。
定住者という在留資格は、特別な理由がある外国人に日本への居住を認めるために設けられた制度です。
 
①要件:素行が善良であること
 これは技術・人文知識・国際業務等、就労ビザの内容と重複しますので、省略します。
 
②要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 これも、技術・人文知識・国際業務の内容と重なる部分は省略しますが、年収の要件について、日本人の配偶者等や永住者の配偶者等では継続年収要件は過去1年間でしたが、定住者の場合は就労系ビザと同様に、過去5年間継続して300万円以上あったかどうかが基準となっています。転職や扶養人数についても、就労系ビザと同様の審査基準になります。
 
③要件:その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ⅰ. 「定住者」の在留資格を許可されてから、引続き5年以上日本に在留していること。
  これも前述と同様、「引続き」に注意が必要です。1回で3ヶ月以上の出国や年間で合計100日以上の出国がある場合は、引続きとは判断されません。
日本人の配偶者等のビザを持っていた方が、配偶者(日本人)との離婚や死別によって定住者のビザを許可された方については、定住者の在留資格が許可されてから引続き5年以上では無く、日本人の配偶者等の在留資格での在留と合わせて引続き5年以上日本に滞在していることで、この要件に該当するものとして取り扱われます
 
ⅱ. 納税義務等公的義務を履行していること
 これは、就労系ビザと要件は同じですので省略します。各種税金を支払っていること当然で、納期限を守って支払いをしているかまで、審査の対象になります。
 
ⅲ. 現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
ⅳ. 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ⅴ. 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
以上においても、就労系ビザの内容と同じです。
 
④要件:身元保証人がいること
  これも身分系ビザと同様ですが、親や勤務先の社長や上司にお願いする方が多いようです。前述したように、くれぐれも身元保証人の保証内容をよく理解してもらうことが重要です。
 
【永住申請の流れについて】
(1)永住権の審査期間
 出入国在留管理庁のホームページを見ると、現時点で標準処理期間は4ヶ月と記載されています。しかし実際には、最低でも6ヶ月程、長ければ10ヵ月を超えることもありえます。この審査期間については、2017年4月から開始された日本版高度外国人材グリーンカード制度が始まり、短期で永住権を申請できる人が増え、申請件数が増大したのが原因かと推測されます。
 
(2)必要書類の収集から申請書の作成
 現在のビザ(在留資格)から永住申請を希望される方から、前述した審査基準に適合しているか、よくヒアリングをさせていただきます。そして審査基準を満たしていると、こちらが判断すれば、必要書類の収集等を開始致します。
 
ⅰ. 永住申請の必要書類
〈共通書類〉
・永住許可申請書
・証明写真(3ヶ月以内のもので、無帽無背景のもの)※16歳未満の方は提出不要
・在留カード
・パスポート
申請理由書(永住許可を必要とする理由を記載)
  この理由書は重要です。A4用紙1枚~2枚にかけて、別紙で記述する必要があります。何を書けばいいのか分からない場合でもご安心ください。こちらがサポートさせていただきます。
・年表(申請人の在留歴・学歴・職歴・身分関係変更歴等を記載)
・住民票(世帯全員分で省略無し(住民コードと個人番号は除く)のもの)
・自宅の不動産登記簿謄本か、賃貸借契約書のコピー
・自宅の写真(外観・玄関・キッチン・リビング・寝室)
・スナップ写真(家族や職場の人、身元保証人と写っているもの)3枚以上
・納税証明書その3
  取得税目:源泉所得税及び復興特別所得税・申告所得税及び復興特別所得税・消費税及び地方消費税・相続税・贈与税
・ねんきん定期便(全期間の年金記録情報が表示されているもの)又は、ねんきんネットの
 「各月の年金記録」の印刷画面
・住民税の課税証明書(直近5年分)
・住民税の納税証明書(直近5年分)
・国民健康保険の納税証明書(直近5年分※国民健康保険にご加入の方)
・国民健康保険の領収証書(直近5年分※国民健康保険にご加入の方)
・健康保険証のコピー(表と裏)
・住民税の領収証書の写し(会社員で給料から天引きされている方は不要)
・預金通帳のコピー、又は残高証明書
・最終学歴の卒業証明書又は卒業証書のコピー
・国家資格等を持っている場合は、合格証のコピー
 
〈会社員の方(本人又は扶養者)〉
・在職証明書
・源泉徴収票(直近5年分)
・給与明細書(直近3ヶ月分)
 
〈会社経営者の方(本人又は扶養者)〉
・登記事項証明書
・定款のコピー
・営業許可書のコピー
・法人税の確定申告書のコピー(直近3期分)
・社会保険料納入証明書
・健康保険・厚生年金保険料の領収証書のコピー
・会社案内又は、ホームページの画面を印刷したもの
 
〈高度人材として申請する方(本人又は扶養者)〉
・在職証明書又は法人登記事項証明書
・源泉徴収票(直近1年分又は3年分)
・申請月から未来1年分の年収見込証明書
 
〈身元保証人に関する書類(日本人又は永住者の方に依頼)〉
・身元保証書
・住民票(世帯全員分で省略無し(住民コードと個人番号は除く)のもの)
・住民税の課税証明書(直近1年分)
・住民税の納税証明書(直近1年分)
・職業を証明する書類(在職証明書又は法人登記簿謄本等)
・申請人との関係を説明する文書
 
〈家族に在留資格「家族滞在」の方がいる場合〉
《中国人の場合》
・結婚公証書
・出生公証書
《韓国人の場合》
・婚姻関係証明書
・基本証明書
・家族関係証明書
《その他の国の方の場合》
 以下のいずれかの書類で、身分関係を証明できる書類
・戸籍謄本
・婚姻届の受理証明書
・結婚証明書
・出生証明書
※以上の本国書類については、すべて日本語翻訳が必要です。
 
〈用意できれば、許可により有利になる書類〉
・勤務先の代表者が作成した推薦状
・表彰状、感謝状など
 
身分系ビザからの永住申請の場合は、必要書類が多少違ったり、申請人ご本人の現在の状況により、追加の説明文なども必要になる場合があります。詳細はご面談時にご説明させていただきます。
 
【永住申請中や不許可になった場合】
 永住申請期間中や、無事に永住権取得後の注意点等についてご説明致します。
永住審査期間中に転職した場合
 収入や職務上の地位が向上したなど、キャリアアップ転職なら問題ないのですが、そうでない場合は、審査上はマイナスとなります。就労系ビザをお持ちの場合は、いずれにしても転職したら、「就労資格証明書」を必ず取得してください。就労資格証明書とは、転職した先の会社での業務が現在の在留資格に該当していることを証明するものです。
 
永住審査期間中に、現在のビザの更新が不許可になった場合は?
 永住審査も不許可になります。その状態を放置すると、日本に在留できなくなりますので、永住権よりも現在の在留資格をどうするかを考える必要があります。不許可理由をきちんとヒアリングした上で、再申請や別の在留資格も視野に入れて検討しなければなりません。
 
・永住権が不許可になってしまったら
 出入国在留管理庁は、永住権を許可にするか不許可にするか、広く裁量を持っていますので、申請すれば必ず許可になる性質のものではありません。不許可になるパターンは大きく分けると、以下の2パターンになります。
《パターン1》そもそも許可になる要件を満たしていなかったため、どういう申請をしたところで許可になる見込みは限りなく少ない場合です。
《パターン2》申請内容によっては、本来は許可になるケースであるにもかかわらず、
  申請書作成において書類不備、説明不足や誤解を生む要素を記載してしまい、不許可になるパターンです。この場合は、不許可理由をよくヒアリングし、しっかり準備した上で再申請することによって、許可になる可能性は十分にあります。不許可の場合、入管へその理由を聞きに行くことは可能ですが、初回の永住申請をご自身でされた場合は、行政書士が同席することができません。その場合は事前にこちらへご相談いただければ、ヒアリングのポイントをご説明致しますので、ご安心ください。
 
【永住権の取得後について】
外国人配偶者を呼びたい場合
 外国人が永住者の在留資格を許可された場合は、その配偶者や日本で生まれた子供は、「永住者の配偶者等」のビザ(在留資格)を取得できるようになります。しかし、本人が永住ビザが取得できたからといって、その配偶者や子供が、自動的に永住者の配偶者等をのビザを許可されるわけではありません。許可されるためには、夫婦の婚姻の実態の証明や子供であれば自身の子供である証明が必要になります。さらには、永住者本人がしっかりと扶養できるかも審査されます。
 
家族で永住権を取得したい場合
 例えば、外国人のご夫婦の場合、ご主人は「技術・人文知識・国際業務」で、日本在留10年経過、かつ、技術・人文知識・国際業務ビザで直近5年経過しており、奥さんは、「家族滞在」で日本在留1年、婚姻期間は3年経過している場合、ご夫婦二人で同時に永住申請が可能です。もちろん、素行善良要件や独立生計要件等、お二人ともが他の条件もクリアしていることが必要です。
 
子供が生まれた場合
 永住者の在留資格を持っている方で、配偶者も外国人の場合は、子供が出生してから30日以内に、「在留資格取得許可申請」の手続きが必要です。この手続きをすることで、そこから1年以上在留すれば、子供も「永住権」の申請が可能になります。
配偶者が日本人の場合は、その子供は日本国籍になりますので、市役所等への出生届でOKです。
 
・永住権の取消し
 苦労して申請した永住権でも、取消しになることがあります。
まず、日本人と離婚や死別した場合は、取消しにはなりません。日本人の配偶者等の在留資格は、日本人との結婚の継続がビザの更新の条件になりますので、将来的に日本に住み続けたいとお考えの外国人の方は、永住ビザを取得できるタイミングで早めに申請しておくことをお勧めします。
永住ビザが取消しになる典型的なケースは以下のような場合です。
ⅰ. みなし再入国許可制度を利用して出国し(正式な再入国許可を取らず)1年を超えてしまった場合、又は正式な再入国許可を取得して出国したが、再入国許可の期限が切れてしまった場合。
 みなし再入国許可は1年以内に帰国する場合のみ有効ですが、1年を超えてしまった場合は、永住権は取消しになります。
ⅱ. 過去に日本に入国する際に虚偽申請・偽造書類等で申請し、在留許可を受けたことが
 発覚した場合
ⅲ. 麻薬や覚せい剤、売春等の罪を犯し一定の刑罰に処せられた場合
 
●日本人の配偶者等

 このビザ(在留資格)は主に、外国人の方が日本人と結婚して、日本国内に住むために必要なビザです。いわゆる「国際結婚」をして、その外国人の母国で暮らすなら、もちろんこのビザは必要ありません。要するに、「外国人と結婚して日本で暮らす」となると、国際結婚手続きとビザ手続きの両方が必要になるということです。まず、最初の手続きである「国際結婚」からみてきます。
 
【国際結婚の手続き】
 
(1)国際結婚の手続きはややこしい?
 日本人同士の結婚ならば、婚姻届を市区町村役場に提出するだけですが、外国人と日本人の国際結婚の場合は、基本的には、日本で婚姻手続きをして、さらに外国人配偶者の母国でも婚姻手続をすることが必要になります。後述します「日本人の配偶者等」の在留資格申請にあたっては、両国で婚姻済みであることが基本的要件です。
日本に夫婦二人で住んでいる場合は、まずが日本での婚姻手続から始めるのが普通ですが、手続きにあたっては、外国人配偶者の母国の各種証明書が必要なことが多いです。
この外国書類の取得は、もちろん国によって異なりますが、一般的には相手国が発行した「婚姻要件具備証明書」「出生証明書」などになります。多くは在日の(日本にある)相手国の大使館や領事館で取得できます。これらは、外国人配偶者が独身であることの証明書になります。もちろんそれらは外国語で記載されていますので、日本語の翻訳文を添付し、翻訳者の署名をしなければなりません。しかし、外国人配偶者の母国で先に婚姻手続きをする場合は、後述しますがさらに煩雑になります。
 
(2)婚姻要件具備証明書とは?
 婚姻要件とは、日本人の場合は、男性は18歳以上、女性も18歳以上(令和4年4月より)でなければ結婚できません。結婚に関するこれらの制限を婚姻要件といいます。これは世界各国によって違い、例えばイギリスなんかは、男女とも16歳で結婚できます。したがって、その外国人の方が婚姻要件を満たしているかどうかは、その方の国の法律で決められています。これから結婚しようとする人が婚姻要件を満たしていることを証明した書類のことを「婚姻要件具備証明書」といいます。
・日本人の婚姻要件具備証明書の取得方法
  日本人の婚姻要件具備証明書は、法務局(本局か支局)で発行しています。これを配偶者の母国の役所に提出する場合は、さらに、日本の外務省の認証を受けなければなりません。外国人配偶者の母国で先に婚姻手続をする場合、例えば、中国在住の中国人の方と結婚する場合で、先に中国で入籍するのであれば、まず、日本の法務局で婚姻要件具備証明書を取得し、次に日本の外務省へ持参し、認証を受ける必要があります。さらに中国の場合は、在日中国大使館でさらに認証を受ける必要があります。
・外国人の婚姻要件具備証明書の取得方法
 外国人の婚姻要件具備証明書は、国によって取得方法に違いがありますので、事前にその方の国の駐日大使館・領事館のホームページで確認するか、ご本人に電話で直接確認を取ってもらうのがいいと思います。多くは取得にあたって、本国から出生証明書や独身証明書を取り寄せる必要があります。ちなみに、日本で先に婚姻手続きをする場合、外国人側の婚姻要件具備証明書の提出を求められます。
 
(3)国際結婚と名字の変更
 日本人同士の結婚の場合、戸籍が一緒になるため、男性側か女性側か、どちらか一方の名字に統一され、夫婦は同じ名字を使うことになります。国際結婚の場合、例えば日本人女性と外国人男性の結婚の場合、外国人は戸籍が無いため、日本人女性は結婚前の名字を使い続けることになります。しかし、「結婚したから名字を統一したい」と希望すれば、結婚から6ヶ月以内に「外国人配偶者の氏への変更届」を提出することにより、日本人は外国人配偶者の名字を使うことができます。それにより、戸籍の名前の名字が変わります。逆に、外国人女性と日本人男性との結婚の場合で、外国人女性が名字を日本人男性の名字にしたい場合は、「通称名」の変更申請をすれば可能です。あくまで通称名としての位置づけで、外国人の本名自体は変わりません。
 
(4)国際結婚と戸籍謄本
 日本国民には、「戸籍」というものがあります。日本人でない外国人の方は、日本には戸籍がありません。ということは、日本人は戸籍謄本を取れますが、外国人の方は戸籍謄本を取れません。
結婚前の日本人は両親の戸籍に入っており、結婚をすると、両親の戸籍から抜けて新しい戸籍ができます。両親の戸籍から抜けることを「除籍」といいます。日本人同士の結婚であれば、二人が一緒に入っている戸籍ができます。しかし、外国人の方と結婚した場合は、日本人一人の戸籍ができますが、その戸籍謄本の身分事項欄に、外国人配偶者の氏名や国籍が記載されることになります。これで結婚しているという状態が分かります。
 
【日本人の配偶者等 在留資格申請について】

 複雑な国際結婚の手続きが完了し、そのまま日本に滞在できればいいのですが、もう一つの関門があります。「日本人の配偶者等」のビザ(在留資格)申請です。「等」がついていますが、配偶者以外に適用されるのは、次の者になります。
・日本人の子として出生した者(日本人の実子)
 申請人本人の出生時に、父母どちらかが日本国籍を有しており、出生時は日本国籍であったが、その後になんらかの事情で日本国籍を離脱した人。あるいは、日本人と外国人の間で子供ができたが結婚に至らず、外国人側に引き取られ、日本国籍を取らなかった人、などが対象になります。
・日本人の特別養子
 「特別養子」とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いとすることです。原則15歳未満で行う養子縁組のことを言います。普通養子の場合は、日本人の配偶者等の在留資格の対象にはなりません。
 
では、メインである「日本人の配偶者」ビザについてご説明します。
(1)日本人の配偶者
 配偶者とは、有効に婚姻している人で、内縁関係は含まれません。さらに、有効に婚姻している人でも、同居・相互扶助・社会通念上の夫婦の共同生活を営むといった「実態」がないと、在留資格は許可されません。
・日本人配偶者ビザで同居は必須か?
 このビザを取得するにあたっては、夫婦の同居が実務上重要視されています。したがって、新規で申請する時は同居はまず必須条件です。その後のビザの更新時に同居していない時については、同居していない(できない)理由を文書に詳細にまとめる必要があります。現在の夫婦関係においては、週末婚や通い婚などさまざまな夫婦の形がありますが、配偶者ビザを取るという前提で考えると、「同居」が重要になります。たとえ、単身赴任と言えども、別居という事実があるので、細心の注意を払って詳細に理由書を作成する必要があります。要するに入管は、夫婦の同居を常識のように押し付けている側面がありますが、それは現在もなお、偽装結婚で配偶者ビザを取ろうとする人がいるからです。
 
(2)日本人配偶者ビザ申請のポイント
 気をつけなければならないのは、正真正銘の結婚だからといって、提出種類の内容によっては必ずしも許可されないということです。特に海外からの外国人配偶者の呼び寄せ
(在留資格認定証明書交付申請)は、昨今の偽装結婚の増加に伴い、審査がより厳しくなっています。1度不許可になった場合の再申請や、海外から外国人配偶者の呼び寄せる手続きについては不許可になりやすいので、最初から行政書士のサポートを受けることをお勧めします。特に不許可になりやすいケースは次のような場合です。
夫婦の年齢差がかなり大きい場合
結婚紹介所のお見合いによる結婚の場合
出会い系サイトで知り合った場合
・日本人側、外国人側、双方とも収入が低い場合
・日本人側、外国人側、どちらか一方にでも、過去に離婚歴が複数件ある場合
 (日本人であれば外国人との離婚歴、外国人であれば日本人との離婚歴)
出会った場所が、キャバクラなどの水商売系のお店の場合
交際期間がかなり短い場合
交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきていなかったので、提出できない場合
結婚式を行っていない場合
 
(3)海外から外国人配偶者を呼びたい場合
 外国人配偶者が海外に住んでいる場合は、「日本に呼び寄せる手続き」が必要になります。海外で結婚された場合、外国人の夫・妻はビザがありませんので、観光などでは、「短期滞在」ビザで入ってくることは可能ですが、「日本人の配偶者等」という中長期のビザを取得する必要があります。この場合はまず、日本の出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請」という、外国人の方が日本に新規で入国して中長期のビザを取得するための手続きをします。審査が通ると「在留資格認定証明書」がもらえますので、これを海外にいる夫・妻へ送ります。そして、現地の日本大使館でこの証明書を添付して申請し、現地で「ビザ(査証)」をもらい、日本に入国する流れになります。これは就労系のビザであろうが、中長期のビザを取得するために新規で日本へ入国する場合は、すべてこの手続きが必要になります。
・短期滞在→日本人の配偶者等 への変更
 現状ではほとんどの方が、在留資格認定証明書交付申請の前に、パートナーと会うために短期滞在ビザで日本に入国しているのが多いと思われます。そこで、可能であれば短期滞在ビザから日本人の配偶者ビザへ変更ができればベストなのに…と思われています。そうなんです。原則、「短期滞在」ビザから「日本人の配偶者等」ビザへの変更は認められていません。これも配偶者ビザだけでなく、就労系ビザ等の他のビザでも同じです。ただし、例外はあります。「やむを得ない特別な事情」がある場合、認められる場合があります。例えば、子供が生まれた場合や病気になってしまったような場合が考えられます。このケースでは、申請前に書類一式を準備し、出入国在留管理局の「永住審査部門」へ行き、書類一式を見てもらった上で申請を受け付けてくれるか事前相談してからの手続きになります。ただし、申請を受け付けてもらえたからといって、確実に許可がでる保証はありません。原則はあくまでパートナーの方は一旦帰国し、日本人側が「在留資格認定証明書交付申請」で呼び寄せるのが確実なやり方になります。
 
(4)日本国内に滞在中の外国人と結婚する場合
 外国人の夫・妻がすでに日本に住んでいて、就労系ビザとか留学ビザを持っている場合は、「在留資格変更許可申請」という手続きになります。これも例えば、「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更する場合もこの変更許可申請になります。ただ、すでに日本住んでいるからといって、変更許可申請が確実に許可されるということはありません。入管法上では、「当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当な理由がある時に限り、これを許可する」と規定されており、ただ結婚したからといって適当な書類を提出しても許可されません。しっかりと準備をして申請する必要があります。以下にオーソドックスな変更許可申請のパターンを二つ、解説致します。
留学→日本人の配偶者等 への変更
 日本語学校の留学生や、大学・専門学校の留学生と付合いが始まり、卒業を待って配偶者ビザへ変更申請をするのか、学校を途中で退学して配偶者ビザへ変更するのかで、大きく難易度が違います。留学生が卒業をしてから日本人の配偶者ビザへ変更申請する場合は、留学生としての責務を全うし結婚したのであるから、比較的スムーズに審査が運びます。ただし、今後の日本での生活の見通しや、仕事においての人生設計等、しっかりと説得力のある文書を作成する必要はあります。そして当然ですが、学校を退学して配偶者ビザへの変更申請をする場合は、審査が厳しくなります。「なぜ、退学したのか」という点を入管は指摘してきます。「もう勉強したくないから、日本人を結婚すれば日本にいられる。主席率や成績が悪く退学になり、留学ビザが切られそう。」と考えている外国人の方も存在します。やはり、卒業まで待ってから配偶者ビザへの変更申請をすることをお勧め致します。
就労系(技術・人文知識・国際業務など)→日本人の配偶者等 への変更
 日本で働く多くの外国人の方は、就労系のビザを持って日本に在留しています。日本人と結婚した場合は通常、その就労系のビザから日本人の配偶者ビザへ変更手続きをされます。ただし、就労系のビザを持って働いている外国人の方は、日本人と結婚したからといって「日本人の配偶者等」へ変更しなくても違法ではありません。ただ、就労系のビザはいろいろ制約があります。技術・人文知識・国際業務であれば、学校で専攻した学部・学科に沿った業務内容であることが求められますし、転職した場合、次の更新手続きの際、審査レベルの難易度は上がります。高度専門職ビザの場合は、転職した場合には必ず、在留資格変更許可申請をしなければなりません。以上のようなことがありますので、日本人と結婚した場合は、配偶者ビザへ変更したほうがいいと思われます。配偶者ビザへ変更した場合のメリットをまとめますと、
ⅰ. 高度専門職の場合、転職しても変更許可手続きが不要
ⅱ. 仕事を辞めても、ビザの取消しはない
ⅲ. 永住申請時の条件が緩和される
ⅳ. 帰化申請時の条件が緩和される
ⅴ. 会社設立手続きが容易になる(経営・管理ビザが不要になる)
 
(5)申請に必要な書類について
 以下に記載している必要書類ですが、入管のホームページに掲載されている必要書類より多いですが、「この結婚は真実である」ことを説明するにあたって説得力を持たすことが必要ですので、それなりのボリュームになります。
 
〈共通書類〉
・在留資格認定証明書交付申請書(海外からの呼び寄せの場合)
・在留資格変更許可申請書(日本に他のビザで在留中の場合)
質問書…これは入管指定の様式で、全8ページあります。結婚に至った経緯(初めて
  出会った時期と場所から、結婚までの経緯)、紹介者がいれば、その方の名前、夫婦
  間の日常会話の言語とお互いの母国語、結婚式をした場合はその詳細、結婚歴、
  お互いの渡航履歴、お互いの親族、その親族は今回の結婚を知っているか等…詳細に
  記載する必要があります。入管はこの書類を大変重要視しており、仮に虚偽の記載を
  し、それが発覚した場合は不許可になることはもちろん、非常に悪質な場合は、取り
  調べから逮捕に至る場合もあります。
申請理由書…これは入管の必要書類ではありませんが、二人の結婚が愛のある真実の結
  婚であることにより説得力を持たせるため、通常は提出する書類です。お互いの性格
  やこれまでの経緯を文章にまとめる必要があります。
・身元保証人…これは永住申請の際のものと同じで、道義的責任のみを負うものです。通
  常は、配偶者になってもらいます。
・返信用封筒(404円切手を貼付・認定申請のみ)
〈外国人配偶者に関する書類〉
・証明写真(4×3)1枚…3ヶ月以内撮影のもの
・パスポート
・在留カード
・本国から発行された結婚証明書(翻訳が必要)
・履歴書
・最終学歴の卒業証明書又は在学証明書
・日本語能力試験の合格証明書のコピー
〈日本人配偶者に関する書類〉
・戸籍謄本(婚姻の記載があるもの)
・住民税の納税証明書又は課税証明書(年間の総収入、課税額、納税額)が記載されたもの
・在職証明書
・給与明細書のコピー(3ヶ月分)
・住民票(日本人の世帯全員の記載があるもの)
・パスポートのコピー
〈会社経営者の場合(日本人又は外国人配偶者)〉
・登記事項証明書
・貸借対照表・損益計算書のコピー(直近年度分)
・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの)
〈交際及び結婚の事実を裏付ける書類〉
スナップ写真…10枚以上。これまでの交際中のさまざまな写真を提出できるかは非常に重要です。全く無いとか、数枚しかない、申請前に撮った写真しかない場合は、「この結婚は真実である」ことを証明するのは大変困難です。
・国際電話の通話記録
・メール履歴
〈住居・生計に関する書類〉
自宅の写真(外観、玄関、台所、リビング、寝室)
・自宅の不動産賃貸借契約書又は所有している場合は、登記事項証明書のコピー
・扶養者の預金通帳のコピー
〈場合により提出する書類〉
・両親の嘆願書
・友人の嘆願書
・在日親族の上申書
・上司の上申書
〈本国から発行された結婚証明書について〉
ⅰ. 中国人の方
・結婚公証書…中国の「公証処」で取得します。
・結婚証のコピー
 ※結婚公証書が取れない場合は、結婚証のコピー
ⅱ. 韓国人の方
・婚姻関係証明書…在日韓国領事館で取得できます。
ⅲ. その他の国の方々、それぞれの婚姻関係証明書
 ※外国書類はすべて、日本語翻訳が必要です。
 
(6)不許可になりやすいケースへの対応策について
ⅰ. 夫婦の年齢差が大きい場合
 夫婦の年齢差が大きい場合は、不許可の可能性が高くなります。実務的な感覚では、夫婦の年齢が15歳ほど以上離れていると偽装結婚の疑いを持たれる度合いが強くなるのではないかと思われます。なぜなら年齢差があるということは、それだけで相性や価値、観が合わなくなることが一般的で、入管もそのあたりを審査の基準にしていると思われます。過去のビザ目的の偽装結婚の例を見ると、確かに年齢差が大きいものが多いのも事実です。では、夫婦の年齢差が大きい場合の申請にあたっての注意点ですが、二人の交際の経緯を可能な限り詳しく説明します。お互いの気持ちの変化なども詳しく記載するとよりいいと思います。
・「なぜ」交際しようと思ったのか?
・交際中のデートは、どのような所に行ったのか?
・「なぜ」結婚しようと思ったのか?
・お互いのご両親等にご挨拶は行ったのか?
・「なぜ」彼(彼女)は、交際を、ましてや結婚を受け入れてくれたのか?
これらのような「なぜ」という疑問をすべて説明します。そして、それに関わる立証資料として、お互いの写真やお互いの通信記録なども提出するといいと思います。写真については、二人で映っている以外にも、家族や友人と一緒に写っているものもあれば、よりいいです。彼(彼女)が海外にいる場合は、会いにいった回数も重要になります。一度も会ったことが無いのは論外で、あまりに少ないようでも偽装結婚と断定され、不許可になる確率は高くなります。
 
ⅱ. 結婚紹介所のお見合いによる結婚の場合
 結婚紹介所などのお見合いによる国際結婚の場合も、不許可の可能性が高いです。結婚紹介所に登録する外国人というのは、日本に行きたいがためのビザ目的で日本人と結婚した人や、お金目的で結婚をし、実際に日本に来てからは結婚生活の実態を伴わない場合が非常に多いためです。では、本気の結婚であることをアピールするための方法を説明致します。まずは結婚紹介所について、できる限り詳しく説明します。
・結婚紹介所の概要、登録者の傾向や規模・運営者の情報
・紹介についての流れ
・会員登録をする際の審査基準
これらのような紹介所の詳細な説明をして、その上で結婚した彼(彼女)との交際や結婚に至るまでの経緯や気持ちの変化を説明します。それに関わるお互いの写真や通信記録も提出します。紹介所を介した通信記録もあると、なおよいと思います。あと、同様に会いにいった回数も重要になります。一度も会ったことが無いのは論外で、あまりに少ないようでも偽装結婚と断定され、不許可になる確率は高くなります。
 
ⅲ. 出会い系サイトで知り合った場合
 この場合も、不許可の可能性が非常に高いです。出会い系サイトに登録する外国人もビザ目的やお金目的で結婚しようとする方が多くいるのが実態です。それでももちろん、本気の結婚の方もいらっしゃいます。そのアピールの上手な仕方をご説明致します。まずは、当該出会い系サイトについて、できるだけ詳しく説明します。
・出会い系サイトの概要(登録者の規模や傾向など)
・セキュリティー対策や秘匿性
・登録する際の審査基準
このような当該出会い系サイトの詳細な説明をした上で、お互いの交際や結婚に至るまでの経緯や気持ちの変化を説明致します。そしてそれに関わる立証資料として、お互いの写真、通信記録も提出します。出会い系サイトを介した通信記録があれば、なおいいと思います。あと、同様に会いにいった回数も重要になります。一度も会ったことが無いのは論外で、あまりに少ないようでも偽装結婚と断定され、不許可になる確率は高くなります。
 
ⅳ. 日本人配偶者の収入が低い場合
 結婚がまっとうだとしても、日本人配偶者の収入が低い場合は、不許可の可能性が高くなります。なぜなら、結婚の信憑性は問題ないような場合でも、今後日本での結婚生活が経済的に安定して送ることができないような場合では、ビザの許可を出しても意味がないからです。収入が少ない場合には、すぐに結婚生活が破綻するリスクが高く、さらに犯罪などの違法行為に手を染める可能性も高くなってくるため、入管は審査を厳しくしています。では、どのような対策がいいのかをご説明します。まずは、ご自身の資産や収入について見直してみることをおすすめします。さらに、親族等の支援が受けられる状況であれば、その旨を記載するといいでしょう。
・ご自身の預貯金や不動産など
・就職先の雇用形態と給与
・ご自身の就労状況や求職活動状況
・ご親族等からの援助
・その援助を受けられる場合はどのような援助か
・ご親族の預貯金や不動産など
入管が収入として認めているのは、課税・納税証明書に基づいたものです。就職して間もない場合や転職活動中の場合には収入額が低い、もしくは0である場合もありえると思います。その場合には前述のようなご自身の資産等を見直し、求職中である場合には失業手当を受けており当面の生活基盤に問題がないことや、具体的な求職活動の状況等を記載するといいと思います。ご自身だけで補えない場合は、ご親族等に援助をお願いする必要があり、ただ了承を得るだけではダメで、援助をしてくれる方の収入証明を提出する必要があります。
 
ⅴ. 日本人配偶者が過去外国人との離婚を繰り返している場合
 外国人との結婚・離婚を繰り返している場合には、日本人が外国人からお金をもらって
 偽装結婚をしている場合があります。ビザ目的で外国人からお願いされ、お金と引き換えに結婚するようなケースです。この場合は結婚の経緯自体も虚偽の内容が多いため、入管は非常に警戒しています。ただ、あまりに多い(離婚回数が4、5回以上)となると、対策が非常に厳しいものがありますが、2、3回程度までであれば、まずは離婚の経緯をできるだけ詳しく説明し、離婚という経験を踏まえた上で今回の結婚に至った気持ちの変化等を記載します。
・「なぜ」離婚をしたのか、離婚に至った原因はどのようなことなのか?
・「なぜ」再婚相手と交際しようと思ったのか?
・交際中はどのようなところへ行ったのか?
・「なぜ」再婚しようと思ったのか?
・相手は前婚のことについてどこまで知っているのか?
このような「なぜ」という疑問をすべて説明します。そして、それに関わる立証資料として、離婚の原因になったことの証明(浮気写真や借金がある場合は借用書など)の資料を提出します。加えて再婚相手との交際中の写真や通信記録等も提出します。
 
ⅵ. 出会いが外国人パブなどの水商売のお店の場合
 この場合も不許可の可能性が高くなります。なぜなら水商売で働いている場合は、税金をきちんと納めていない等、来日以降の在留状況に問題があると見なされる場合が非常に多いためです。また、本人が違法なことをしていなくても、お店が違法状態(留学生を雇っていたり、就労制限のある外国人女性を雇っている等)である場合もあります。しかし、それでも本気の結婚であって、入管を説得させるための対策についてご説明します。
まずは同様に二人の交際の経緯をできる限り詳しく説明します。
・日本に来た経緯、具体的な年月日や在留資格等の説明
・来日から現在までの在留資格の変遷
・水商売で働くことになった経緯
・結婚後も水商売のお店で働くのか
・婚姻後の結婚生活上の経済基盤の説明
結婚までの経緯を詳細に説明することと、結婚後も水商売は続けるのか、辞めるのかについて、パートナーの考えについても説明したほうがいいでしょう。それに関わる立証資料として、二人の写真や通信記録も提出します。
 
ⅶ. 交際期間がかなり短い場合
 この場合も不許可の可能性が高くなります。交際期間が短すぎると、結婚の信憑性に疑義が生じやすくなります。かなり短いというのは、初めて出会ってからおおむね3ヶ月以内くらいの感覚です。つまり偽装結婚の場合は、交際期間などはなしにすぐさま結婚してしまうので、「交際期間が短い=偽装結婚」なのではという疑いが持たれやすくなります。では、どの様に対策すればいいのかをご説明します。まずは同様に二人の交際の経緯をできる限り詳しく説明します。
・「なぜ」交際しようと思ったのか?
・交際中はどのようなところへ行ったのか?
・「なぜ」結婚しようと思ったのか?
・お互いのご両親に挨拶は行ったのか?
・「なぜ」彼(彼女)と短期間で交際に至ったのか?
・ましてや「なぜ」短期間の交際でも、お互いに結婚を決めることができたのか?
これらのような「なぜ」という疑問をすべて説明します。そして、それに関わる立証資料として、お互いの写真やお互いの通信記録なども提出するといいと思います。通信記録については、短期間であっても「このように気持ちが変化した」ことを辿れるようであればなおいいと思います。写真については、二人で映っている以外にも、家族や友人と一緒に写っているものもあれば、よりいいです。
 
ⅷ. 交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきていなかった場合
 写真の提出は重要で、その枚数が少ない場合は不許可の可能性が高くなります。写真というのは、交際していることを証明する重要な立証資料になるからです。つまり偽装結婚であれば、そもそも交際の証明となる写真が用意できないからです。しかし、本気の結婚であるのに、写真を撮る習慣がほとんど無かったカップルも存在すると思いますが、これからでもいいので、恥ずかしがらずに写真を撮ってください
・交際中に二人で出かけた場所での記念写真
・家族や親戚、友人たちとの写真
・自宅でのほのぼのとした二人の写真
・テレビ電話をしている状態の写真
・結婚式や披露宴での記念写真
このような写真を今からでもいいので、どんどん撮ってください。そして交際を立証する資料として通信記録も提出します。そして次回の更新申請の際にも、写真を提供するのがいいかと思います。過去のものが無い場合は、現在のものをできる限り積み重ねていくしかありません。近い将来に配偶者ビザを取る予定のカップルは、機会のあるごとに写真を撮っていかれることをお勧め致します。
 
(7)オーバーステイの外国人との結婚
 外国人の彼・彼女と付き合ってみると、実はオーバーステイだったことが分かったが、そんな二人が結婚して日本で暮らしていくためには、以下の方法があります。
帰国せずに「在留特別許可」を申請する
②一旦帰国してもらってから、認定証明書交付申請で呼び寄せる
まず、どちらの申請をするにしても、婚姻手続済みであることが条件です。「在留特別許可」とは、オーバーステイなどで不法に日本に滞在している外国人でも、日本人との結婚によって「特別に」許可を与えるというものです。まず、②の方からご説明します。
一旦帰国するということは、まず自ら入管へ出頭し、そして出国命令となり、その後1年間は入国禁止期間となり日本に入国できません。仮に強制退去になった場合は、再入国禁止期間は5年になります。入国禁止期間中でも入国させたい場合は「上陸特別許可」がありますが、在留特別許可よりもハードルが上がります。実際、1度帰国してしまうと、再来日できる保証はないと言われています。いわゆる認定証明書交付申請手続きによる呼び寄せになりますが、過去にオーバーステイという日本での違法行為があった以上、審査は厳しいものとなります。そこで、①の帰国せずに「在留特別許可」を申請するという方法です。ただしご想像の通り、在留特別許可は通常の申請に比べて難易度が上がりますので、以下にポイントを絞って解説致します。
・「在留特別許可」とは?
 そもそも在留特別許可とは、不法滞在(オーバーステイ)等の外国人に対し、法務大臣の自由裁量によって特別に日本での在留を許可する措置です。許可も目安として、「在留特別に係るガイドライン」というものが法務省から発表されています。それによると一般的には、次の3つのケースになります。
日本人と結婚していること
永住者と結婚していること
日本人の子供を養っていること
ただしこの3つは、許可の可能性が高くはありますが、必ずしも許可になるわけではありません。仮に他に、刑法違反や素行不良、過去に退去強制手続きを受けている場合は、許可がかなり難しくなります。しっかり書類を準備して申請書を提出しても6ヶ月程かかり、1年以上かかることもあります。
 
【配偶者ビザの取得後について】
 
(1)在留期間の更新について
「日本人の配偶者等」の在留資格は、「6ヶ月」「1年」「3年」「5年」の在留期間が定められています。新規申請の場合は、「1年」か「3年」が多いように思われます。更新手続き時に、次のような状態になっている場合は注意が必要です。
ⅰ. 更新手続き前に、日本人の夫が無職になってしまった
 配偶者ビザの審査項目っは次の通りです。(更新手続であっても同様です)
①結婚の信憑(しんぴょう)性
②結婚の安定性
③結婚の継続性
パートナーが無職になると、「安定性」という意味で問題になります。ただし、信憑性や継続性については何の問題もない場合は、パートナーがたまたま無職になった一つだけの理由で不許可になることは少ないと思われます。証明資料としては、外国人配偶者側にも一定の収入があることや預貯金の量などで、しばらくの間は心配の無いこと。全く収入が無い場合でも、親族等から援助が受けられていることの証明ができれば、許可になる可能性は十分にあります。
ⅱ. 更新手続き前に、別居や離婚協議中になっている場合
 離婚調停、離婚裁判中の場合、判決が確定するまでは、配偶者ビザの更新は続けられる可能性はあります。もちろん、裁判所での進捗状況は各書類や資料とともに入管へ説明する必要はあります。別居については、単身赴任等の正当な理由があれば認めれる可能性はあります。
 
(2)外国人配偶者の連れ子を呼びたい
 外国人配偶者が日本人と結婚する前の、前の配偶者との間にできた外国籍の子供が母国にいて、その子を日本に呼び寄せたい場合です。この場合は、「定住者」という在留資格が申請できますが、申請条件は子供は未成年で未婚であることが必要です。したがって、20歳以上になっている場合は、定住者ビザでは日本へ呼べません。また、基本的に子供の年齢が高くなるほど認定申請の難易度は上がります。問題なく許可になりやすい年齢は18歳未満くらいまでですが、それでも理由書に「日本に来た後は学校はどうするのか、日本人の夫はどのように養育に関わっていくのか、(例えば養子にいれるのかなど)今後の養育計画をしっかり説明した文書を提出する必要があります。単に家計を助けるために、アルバイトができる年齢になったので日本で仕事をさせたいと考えて呼ぶのではないか、と判断されないよう、養育の必要性を詳細に説明することが重要です。
 
(3)外国人配偶者の親を呼びたい
 外国人配偶者の親を長期で日本へ呼びたい場合、高度専門職ビザでは条件付きで可能ですが、他のビザでは原則としては呼ぶことができません。しかし、一定の理由がある場合は「特定活動」ビザで許可が下りたケースはあります。
・本国の親が65歳以上で1人暮らしであること
本国で親の面倒を見る親族がいないことを証明できること
・親を監護できるのは日本にいる子(招聘人)だけであること
・実親を監護するに十分な金銭的資力を有していること
しかし最近は審査が厳しくなり、70歳以上の場合はよほどのケースでない限り、変更は認めていないようです。
 
(4)子供が生まれた場合
 日本人と外国人の間で子供が生まれた場合、14日以内に区役所・市役所へ「出生届」を提出することになります。子供の戸籍は、日本人親の戸籍に入ります。名字は日本人親と一緒になります。さらに外国人親の国籍も取得しておきたい場合は、大使館や領事館に出生届等を提出し、外国人親の子として登録することになります。しかし、子供は二重国籍になりますので、20歳になるまでにどちらかの国籍を選択しなければなりません。放置すると日本国籍を失う場合がありますので、注意が必要です。
 
(5)外国人の方の年金について
 国民年金は、「日本に住んでいる」20歳以上60歳未満の全ての方が加入し、年金を支払う義務があります。ポイントは「日本に住んでいる」なら、国籍は問わないということです。したがって、外国人も国民年金を支払う義務がありますし、将来年金を受取る権利もあります。ただし、外国人ご本人が会社に勤めていて「厚生年金保険」に加入している場合は、「国民年金」を支払う必要はありません。また、外国人ご本人が主婦などで働いていない場合に、日本人配偶者が会社で厚生年金に加入している場合は、外国人配偶者は「3号被保険者」に該当し、年金を支払う必要はありません。支払わなくても3号被保険者として、将来年金は受け取れます。そして、外国人ご本人が母国に帰って、もう日本に戻るつもりがない場合は、国民年金・厚生年金保険とも脱退一時金という制度があります。脱退一時金を請求するには、転出届を出してから出国し、さらに再入国許可期限を経過してから2年以内に請求します。これによって、ビザ(在留資格)は喪失します。
 
(6)「再入国許可」と「みなし再入国許可」
 一時的に出国する場合は、日本出国前に再入国許可を取っておくことによって、出国しても現在の在留資格を消滅させないようにできます。
ⅰ. みなし再入国許可
 1年以内に日本に再入国する場合は、空港での簡易な手続きで済みます。
ⅱ. 再入国許可
 1年を超えて海外に行く場合は、入管で「再入国許可」の申請手続きを行う必要があります。再入国許可の有効期限は最長5年で、特別永住者は6年となっています。
・長期間日本を離れる場合の注意点
 外国人ご本人が今後、「永住」や「帰化」の申請を予定している場合は注意が必要です。3ヶ月以上日本を離れる場合、将来的に永住や帰化の申請の際には、日本での所定の継続在留期間が必要になりますが、3ヶ月以上出国すると、これまでの在留期間がリセットされてしまいます。
 
(7)配偶者ビザの取消しついて
 取消しになる場合ですが、「正当な理由なく配偶者としての活動を6ヶ月以上行わないでいる場合」です。典型的なのは、日本人と離婚後に「日本人の配偶者等」の在留資格該当性が無くなっているにもかかわらず、他の適切なビザに変更しないままでいる場合が当てはまります。離婚裁判中など、正当な理由があれば取消しの対象にはなりませんが、そそうでない場合は、早急に他のビザ(定住者ビザや一般の就労ビザ)を申請して許可を得る必要があります。このことに関連しますが、日本人と離婚又は死別した場合は、その事由が生じた日から14日以内に、出入国在留管理局に届け出る必要があります。この届出を行った上で、早急に他のビザへの変更を検討する必要があります。
 
●帰化許可申請
 
【帰化とは? 帰化の要件とは?】
 
(1)帰化とは?
 「帰化」とは簡単言うと、外国人が日本国籍を取得することです。帰化するためにはその申請手続きが必要になりますが、帰化申請は主に「国籍法」によって規定されています。そして、帰化申請の管轄は出入国在留管理局ではなく、「法務局」になります。法務大臣が許可か不許可の最終決定をするということになっています。
 帰化を希望する方は、大きく次の3パターンに分かれます。
①まずは、在日韓国人・朝鮮人の方です。日本生まれの特別永住者の方です。日本語ネイティブで韓国語を話せない方が多くいらっしゃいます。
②二つめは、日本人と結婚した外国人の方が日本国籍を取得するケースです。夫あるいは妻とともに日本に永住するので、日本人になる決意をされた方です。
③三つめは、日本で就労している外国人の方で、既に日本に長期間住んでおられ、永住申請も考えたが、帰化することを決められた方です。
 
(2)帰化の種類
 帰化は、国籍法において「普通帰化」「簡易帰化」「大帰化」の3種類が規定されています。そしてそれぞれ異なった帰化の要件が定められています。
 
(3)普通帰化の要件
 普通帰化の対象となる外国人は、一般的な外国人の方々です。それぞれ皆さんの母国で生まれて、留学生などで日本に来て、卒業後にそのまま日本で就職したような外国人の方が当てはまります。普通帰化の要件は、①住居要件②能力要件③素行要件④生計要件⑤喪失要件⑥思想要件⑦日本語能力要件の七つがあります。
住居要件
 具体的には、国籍法に規定されている「引き続き5年以上日本に住所を有すること」に該当するかどうかです。この「引き続き」が切れるか切れないの目安は、1回の出国日数がおよそ3ヶ月を超えていないかどうかです。これは、永住権の審査と同等と考えていただければけっこうだと思います。また、1回の出国日数は3ヶ月を超えていないが、年間で合計しておよそ150日以上日本を出国すると、これも「引き続き」とは判断されなくなってしまいます。ちなみに永住権は、年間100日程度の出国でNGとなります。理由が仕事の都合等、やむを得ない場合でも、認められない可能性が高いです。それと、「引き続き5年以上」には、その期間のうち、就職をして実際に仕事をしている期間が3年以上必要になります。就労系のビザ(在留資格)を得て、正社員として働いていることがことがポイントですので、契約社員や派遣社員でも就労ビザを得ていれば問題ありません。資格外活動許可を得てのアルバイトでは認められないということです。以上の内容をもとに例をあげると、留学生として2年、就職をして3年の方は要件を満たしています。しかし、留学生として5年、就職をして2年の方は要件を満たしていません。
「就労経験が3年以上必要」には例外があります。それは、引き続き10年以上日本に住所を有する方は、そのうちの就労経験は1年以上でOKになります。
能力要件
 帰化をするには、「18歳以上(2022年4月より)」であることが要件とされています。ただし、18歳未満の方が両親と一緒に帰化申請をする場合は、18歳未満でも帰化が可能になります。
素行要件
 要するに、これまでの生活を真面目に送ってきたかどうかが審査されます。
・税金…まず住民税ですが、会社員の方は給与明細を確認し、住民税が天引きされていれば問題はありません。これを特別徴収といいます。注意が必要なのは、会社から天引きされていない場合や、フリーランスの方です。これは普通徴収といいますが、住民税を自分で申告して支払う手続きをする必要があります。仮にまだ支払っていない場合は、すぐに修正申告をし、所定の金額を支払えば問題ありません。また、配偶者がいる場合は、配偶者の納税証明書も必要になります。本人は未納が無いが、配偶者が滞納している場合は、その配偶者は帰化申請をしていなくても、本人の審査が通らなくなります。あとは、扶養についてです。扶養の人数が多ければ多いほど、住民税が安くなります。例えば配偶者がアルバイトをしている場合、一定以上の所得があると扶養から外す必要があります。それと、母国の両親や兄弟姉妹を扶養にいれている場合は、適切な基準にしたがって扶養にいれている場合は問題ありませんが、母国の両親や兄弟姉妹は、元気で働いているにもかかわらず扶養にいれている場合は、扶養から外し、修正申告をして納税しなければなりません。あと、会社経営者の方は法人としての税金もきちんと支払っていることは言うまでもありません。
・交通違反…基本的に過去5年間で軽微な違反が5回以内だったら、特に問題は無いと判断されているようです。ただし最近の傾向として、交通違反についても厳しくみられる傾向がありますので、違反の回数には注意する必要があります。酒気帯び運転などの違反は軽微な違反には該当しないので、留意する必要があります。
・年金…会社員の方は給与明細を確認し、給与から厚生年金保険料が天引きされていれば問題ありません。住民税と同様に注意が必要なのは、会社から天引きされていない場合や、フリーランスの方です。その場合は、個人として国民年金を支払う必要があります。仮に国民年金をまったく支払っていない場合は、すぐに手続きを行い、直近1年分を支払えば、要件を満たすことができます。会社経営者の方は、会社として厚生年金保険に加入して支払う必要があります。個人事業主の方は、基本的には国民年金ですが、従業員を5名以上雇用していれば厚生年金保険に加入する必要があります。
生計要件
 生計は成り立っているか?という審査です。一人暮らしの方は自分の収入で生活していけるかどうか、又は家族と一緒に住んでいる場合は、家族の収入で生活するのに十分なお金があるかどうかということです。貯金はあるに越したことはありませんが、それよりも安定した職業に就いて、毎月安定的な収入があることのほうが重要です。おおかた月18万円以上あれば問題ないといわれています。仮に現在、失業中で無職の方は、再就職して1年ほど経過してから申請するのがベストです。借金については、住宅ローン・自動車ローンなどでも返済を滞りなくおこなっていれば、問題はありません。
喪失要件
 これは日本に帰化したら、母国の国籍を失うことができる、もしくは離脱できるかどうかです。日本は二重国籍を認めていません。国によっては兵役義務がありますので、男性で兵役義務がある国の出身の方は、それぞれの母国で事前に確認することが必要になります。
思想要件
 簡単にいえば、日本国を破壊するような危険な考えは持っていないことです。テロリストとか、暴力団関係者とかが当てはまります。
日本語能力要件
 日本語能力については、日本語テストがあります。ただし、すべての外国人には課されていないようです。申請時や相談、面接の段階での審査官との会話の中で、日本語能力の不足を思われたら、試験で試されるという感じです。
 
以上が「普通帰化」の七つの要件です。帰化申請を希望する外国人の方が、配偶者も外国人の場合、要するに夫婦二人とも外国人の場合は、本人単独でも、夫婦二人一緒にでも帰化申請は可能です。仮に、一人が帰化要件を満たしていて、もう一人が要件を満たしていない場合でも、同時申請をして許可になるケースは多いです。なぜかというと、一人が帰化許可になれば、自動的にその時点でその配偶者は日本人と結婚している配偶者になります。つまり、日本人と結婚している外国人は、次に説明する「簡易帰化」に当てはまり、帰化要件が緩和されています。ですので、申請の時に「日本人と結婚している外国人の帰化要件(簡易帰化の要件)」を満たしてさえいれば、帰化が許可されうる、ということです。
 
(4)簡易帰化の要件
 簡易帰化は主に、在日韓国人・朝鮮人(特別永住者)の方や、日本人と結婚している外国人の方が当てはまります。ちなみに「簡易」という名称が使われていますが、帰化の要件のハードルが下がっているという意味であり、提出書類のボリュームは普通帰化と変わらないか、場合によりそれ以上にもなります。以下に、簡易帰化に当てはまるケースを具体的にそれぞれのケースに分けてご説明します。
 
ⅰ. 日本国民であった者の子(養子を除く)で、引き続き3年以上日本に住所・居所を有す
 る人
 このケースに当てはまるのは、両親が外国に帰化したと同時に自分も外国籍になっている場合です。例えば、日本人家族がアメリカに一家で移住し、アメリカ国籍を取った場合を想定してみます。父母はそのままアメリカに定住し、アメリカ国籍ですが、子供のみ日本へ帰り日本国籍を取りたい場合、子は「日本国民であった者の子」に該当しますので、上記のケースに当てはまります。
 
ⅱ. 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所・居所を有し、又はその父か母(養父
 母を除く)が日本で生まれた人
 日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の方の多くがこのケースに当てはまります。
 
ⅲ. 引き続き10年以上日本に居所を有する人
 在日韓国人・朝鮮人の方の多くが当てはまります。また、一般の外国人の方でも、10年以上日本に住んでいる方は、1年以上の就労経験があれば帰化されうるのは、この要件に該当するからです。
 以上のⅰ、ⅱ、ⅲのいずれかに当てはまる方は、普通帰化で求められている①住居要件が緩和されるので、②能力要件③素行要件④生計要件⑤喪失要件⑥思想要件⑦日本語能力要件を満たしていれば、帰化申請が可能です。
 
ⅳ. 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所・居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する人
 日本人と結婚している外国人がこケースに当てはまります。日本に3年以上住んでいる場合、日本人と結婚した時点で帰化の要件を満たせます。
 
ⅴ. 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する人
 ⅳと同じく日本人と結婚している外国人がこのケースに当てはまります。この場合は外国で結婚生活を送っていたが、その後に来日し1年以上日本に住んでいる場合に帰化要件を満たせます。
 以上のⅳ、ⅴのいずれかに当てはまる方は、普通帰化で求められている①住居要件と②能力要件が緩和されますので、③素行要件④生計要件⑤喪失要件⑥思想要件⑦日本語能力要件を満たしていれば、帰化申請が可能です。
 
ⅵ. 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する人
 このケースに当てはまるのは、両親だけが先に帰化して日本国籍を取り、子供が後で帰化する場合です。また、日本人の子であるが日本国籍を選ばなかった人が、後に帰化する場合にも当てはまります。
 
ⅶ. 日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組み時に未成年で
 あった人
 未成年の時に親の再婚などにより、連れ子として日本に来た外国人の方で、来日時に義理の父(母)と養子縁組をしたようなケースが当てはまります。
 
ⅷ. 日本国籍を失った人(日本に帰化した後に日本国籍を失った人を除く)で日本に住所を
 有する人
 外国籍になった人が、再度日本国籍に戻るときが当てはまります。
 
ⅸ. 日本で生まれ、かつ、出生時からか国籍を有しない人で、引き続き3年以上日本に住
 所を有する人
 両親とも外国籍の場合は、生まれたときは両親と同じ外国籍になります。
 
 以上のⅵ、ⅶ、ⅷ、ⅸに当てはまる方は、①住居要件②能力要件④生計要件が緩和されますので、③素行要件⑤喪失要件⑥思想要件⑦日本語能力要件を満たしていれば、帰化申請が可能です。
 
(5)大帰化の要件
 「日本に対して特別に功労実績のある外国人に対して許可される」というのが、たった一つの条件になっていますが、現在まで許可された前例が無く、おそらくこれからも無いであろうといわれています。
 
(6)簡易帰化の典型的な二つのケース
 先程触れましたが、簡易帰化の典型的なケースである、在日韓国人・朝鮮人(特別永住者)の方や、日本人と結婚している外国人の方の帰化について、補足説明をします。
 
ⅰ. 在日韓国人・朝鮮人(特別永住者)の方の帰化について
 在日韓国人・朝鮮人の方で帰化を希望される方というのは、20代の前半で学生の場合、就職前に日本国籍になっておきたいとか、公務員になりたいために帰化が必要だとか、日本人と結婚する前に帰化しておきたいとか、このようなご要望が多いと思われます。30代や40代以上の方は、子供が生まれたのを機に帰化しようとか、兄弟姉妹が先に帰化したので、自分もしようと決めたとか、以前から考えてはいたがようやく踏ん切りがついたという方もいます。日本生まれの特別永住者の方は、申請すると許可される可能性が高いです。重い犯罪とかがない限り、普通に生活を送ってきた方は心配いりません。ただ、要件は緩和されていますが、手続き書類を含む手続き全体では、一般の外国人と同じで、逆に日本に住んでいる期間が長いので集める書類が多くなったりもします。けれども必要な書類を集めて申請書も正しく作成し、帰化申請が受け付けられれば大丈夫です。
 韓国現地に行って書類を取ってくる必要はありません。日本にある韓国領事館で韓国書類がすべて取得できます。郵送でも請求可能です。朝鮮籍の方で、韓国国籍のある方と無い方がいますが、無い場合でも帰化申請は可能です。収集が不可能な場合は、本国書類無しで申請を進めることは可能です。本国書類を集めた場合の翻訳は必須です。こちらは、弊所が翻訳も代行しますのでご安心ください。あと、兵役を終わらないと帰化申請できないと思われている方がいますが、日本生まれの特別永住者の方は、兵役義務はありませんので、大丈夫です。
 
ⅱ. 日本人と結婚している外国人の方の帰化について
 通常、一般的な外国人の方の住居要件は、5年以上日本に住んでいることですが、日本人と結婚している外国人の方は、3年以上日本に住んでいる場合、申請要件を満たします。結婚して3年経過していなくても、3年以上日本に住んでいれば結婚した時点で申請要件を満たします。あと、海外で結婚してそこで2年以上経過し、日本に来て1年が経過した場合も、申請要件を満たします。
 注意が必要なのが、日本人と結婚していても、過去にオーバーステイで在留特別許可を取った方です。この場合は、在留特別許可を取った日から10年以上経過している必要があります。あと、就労経験ですが、日本人と結婚している外国人の方は基本的には就労経験は問われません。ただし、その場合は日本人側が生計要件(収入面)を満たしており、年金についても、日本人側が会社員などで厚生年金保険に入っている場合は問題ありません。
 
(7)帰化許可申請の流れについて
ⅰ. 帰化申請を専門に扱っている行政書士に相談予約
 申請に対して不安な点がある、面倒な書類作成などを任せたい、時間が無いという方は帰化を専門にしている行政書士に相談するほうがいいと思います。ただし、行政書士に依頼する場合は、帰化申請を専門に扱っているか事前に確認しましょう。行政書士というのは取扱分野が広いので、専門外の内容についての知識は乏しいものです。
 
ⅱ. 書類の収集と申請書類の作成
 必要書類の収集や申請書類一式の作成は行政書士が行います。国内で集める戸籍謄本や住民票など各種書類の有効期限は3ヶ月です。行政書士に依頼すれば、有効期限切れで再度取り直しをしたりすることはなく、多量の申請書類の作成に自分で取り掛かる必要が無くなり、心理的負担が相当軽減すると思います。
 
ⅲ. 法務局へ申請・受理
 申請書類が整いましたら、法務局へ予約の上、行政書士と共に赴きます。ビザにおける出入国在留管理局への申請と異なり、法務局への帰化申請については、本人申請が原則となっています。申請や相談時における行政書士の同席を認めてくれるかどうかは、各法務局によって異なります。
 
ⅳ. 面接日時の調整~面接
 受理から2~3ヶ月後に、法務局から面接日時についての連絡があります。この面接においては、通常、行政書士の同席は認められておりません。面接時間はおよそ1時間くらいです。基本的には、申請書の内容が確認されます。今回、帰化申請をした動機から聞かれます。結婚している方は、配偶者も来るように指示されることが多いです。
 
ⅴ. 審査
 審査では、勤務先会社への調査や自宅訪問をすることも多いです。また、審査期間中には、法務局から本人に対して質問や追加書類の要求が来ることもありますが、その都度、行政書士に相談いただければと思います。
 
ⅵ. 許可
 法務局担当官から連絡が来ます。また、帰化の許可は官報に掲載されます。申請受付から10ヵ月~1年ほどかかります。
 
【申請に必要な書類について】
 
(1)作成書類について
ⅰ. 帰化許可申請書
 この帰化許可申請書をはじめ、以下の各種申請書について、法務局で取得できるのは紙の申請書のみです。帰化を専門にしている行政書士の多くはWord版を持っており、パソコンで作成できるので綺麗に速く作成することが可能です。申請日前6ヶ月以内に撮影した、5cm×5cmの写真が2枚必要です。
ⅱ. 親族の概要
 日本在住の親族と、外国在住の親族とに分けて作成する必要があります。申請人については記入しません。記載すべき親族の範囲は、申請人の配偶者と元配偶者、両親(養親)、子(養子)、兄弟姉妹、配偶者の両親、内縁の夫(妻)、婚約者です。この中で死亡した方がいれば、死亡者についても記載します。
ⅲ. 履歴書(その1)
 履歴書(その1)には、居住関係、学歴・職歴、身分関係を出生から日付順に記載していきます。空白期間がないように詳細に記載する必要があります。居住関係は、その日付時点での住所、学歴は小学校入学から最終学歴まで全学歴を記載します。職歴は本国での職歴と日本に入国した後に経験した職歴も記載し、正社員以外にアルバイト歴も記載します。また、職種と役職まで記載する必要があります。
ⅳ. 履歴書(その2)
 履歴書(その2)には、出入国歴、技能・資格、賞罰を記載します。出入国歴の記載期間は、簡易帰化で過去1~3年分、普通帰化で5年分です。パスポートを見て記入できればいいですが、印字が薄かったり、出入国が多すぎてよくわからない場合は出入国履歴を請求し、それによるのがいいと思います。技能・資格については、自動車運転免許などの公的免許やその他国家資格等を記載します。賞罰は、主に交通違反になると思います。速度違反や駐車違反の年月日、反則金額を記載します。
ⅴ. 生計の概要(その1)
 生計の概要(その1)は、申請の前月分についての、手取り収入、支出、主な負債を記載します。収入には、給与所得者の場合、在勤及び給与明細書を参考に税金や保険料を控除した手取り額を記入し、会社役員の場合、在勤及び給与明細書を参考に役員報酬の手取り額を記入します。支出には、食費や住居費、生命保険等掛金、預貯金等を記入しますが、注意点としては、収入と支出の各合計が一致する必要があります。主な負債には、住宅ローンや自動車ローンなどを記載し、借入先の金融機関名や完済予定日も記入する必要があります。生計の概要(その1)の書類は、現在生計を維持できているかを測るための書類になります。
ⅵ. 生計の概要(その2)
 生計の概要(その2)には、不動産、預貯金、株券・社債、高価な動産を記載します。不動産を持っている場合は、登記事項証明書を参考に記載し、時価は中古市場を参考に記載します。預貯金については、〇〇銀行〇〇支店まで記入します。金額の記載もしますが、合わせて通帳のコピー等も提出します。株券・社債には、所持していれば記入し、株は市場の時価を記入しますが、日々変動しますのでおおよそで構いません。高価な動産には、おおむね100万円以上のものを記入します。主に自動車を記載することが多くなりますが、車種や年式、排気量まで記載し、時価は中古市場を参考にします。生計の概要(その2)の書類は、現在の個人の資産保有状況を説明する書類になります。
ⅶ. 在勤及び給与明細書
 これは申請者はもちろん、配偶者や生計を同じくする親族が給与等の収入を得ている場合には各自全員分が必要になります。勤務先の代表者か、給与支払責任者からの証明印が必要になりますので、基本は勤務先で書いてもらう書類になります。
ⅷ. 宣誓書
 これは事前に準備する必要は無く、法務局に置いてあり、申請が受理される際に担当官の面前で自筆で署名します。15歳未満の方は不要です。
ⅸ. 帰化の動機書の作成
 これは、「なぜ帰化したいか?」についてのご自分の作文です。特別永住者の方(在日韓国人・朝鮮人)を除いて、全ての外国人の方が作成する必要があります。パソコンは使用できず、A4サイズの用紙に手書きで記載しなければなりません。何を書けばいいのか分からなくてもご安心ください。我々行政書士が参考文をご提供します。
ⅹ. 申請者の自宅付近の略図の作成
 申請日から過去3年の間に引っ越しをされている方は、現在の居住地と以前の居住地も作成する必要があります。これは、手書きで作成してもいいですし、グーグルマップで経路を付けて印刷し、貼付しても構いません。地図の下には、最寄りの駅やバス停等からの徒歩での所要時間も記載します。
ⅺ. 申請者の勤務先付近の略図の作成
 要領は自宅付近の略図と同じで、こちらも過去3年以内に転職をしている方は複数枚作成する必要があります。こちらもグーグルマップの貼付も可能です。申請人が無職で他の方に扶養してもらっている場合は、その方の勤務先の略図を作成します。正社員である勤務先だけでなく、アルバイトの場合も当該アルバイト先の略図を作成します。
ⅻ. 事業の概要
 これは、一般の会社員は記載する必要は無く、事業主(会社経営者、役員、個人事業主)は記載する必要があります。注意点は、代表取締役だけでなく、役員として登記されている方も記載しなければなりません。あと、申請人以外にも生計を一にしている親族が事業主の場合も記載する必要があります。
xiii. 申述書の作成
 これは、実母に記載してもらう書類です。「私と〇〇〇〇(実父の名前)の間に生まれた子は下記のとおりです」とあり、以下に申請人と兄弟姉妹の氏名、続柄、生年月日、出生地をそれぞれ記入します。あと、実母の氏名、現住所を記入し、印鑑かサインをもらいます。実母が亡くなっている場合は、実父に印鑑かサインをもらいます。実母、実父の双方とも亡くなっておられる場合は、兄弟姉妹の中で第1子が代表して記載してもらいます。
 
(2)添付書類について
 次の添付書類については、申請人の方の職業、家族関係、資産、国籍等によって必要な書類は異なってくるため、実際にご依頼いただいた際、お客様の現在の状況をヒアリングさせていただき、リストアップします。ここでは、書類の収集先別に取り上げてみます。
 
ⅰ. 市役所・区役所で取得する書類について
住民税関係
〈一般的な場合〉
・住民税の納税証明書(同居の家族分も必要:直近1年分)
・住民税の課税証明書(同居の家族分も必要(子供を除く):直近1年分)
   住民税の証明書は、毎年6月に直近年度のものが所得できるようになりますが、6月前後の申請になる時は、2年分必要になることがあります。
〈本人、配偶者が非課税(働いていない)場合〉
・住民税の非課税証明書
 収入が無かったり、収入が低い場合は税金が課税されませんので、課税されていないことの証明として非課税証明書が必要になります。
住民票、戸籍謄本関係
〈一般的な場合〉
・住民票  省略事項なしのものが必要です。
・住民票の除票  2012年7月以降に引っ越しをした方は必要になります。
〈配偶者又は婚約者、子、両親の一方が日本人の場合〉
・戸籍謄本  本籍地の役所で取得します。
・除籍謄本  
 戸籍謄本に婚姻日の記載が無い場合は、これか、改製原戸籍謄本でさかのぼります。
・戸籍の附票
 日本人の配偶者がいて婚姻期間が長い場合は、同居歴を見るために求められることがあります。
〈両親、兄弟姉妹の中で帰化した者がいる場合〉
・帰化した記載のある戸籍謄本、除籍謄本
 現在の戸籍謄本では帰化した記載がない場合で、特に結婚・死亡や転籍があるケースでは、除籍謄本や改製原戸籍謄本を取得していき、帰化した記載のある時期までさかのぼることが必要です。
〈本人、兄弟姉妹が日本で生まれている場合〉
・出生届の記載事項証明書  出生届を提出した市区町村役場で取得します。
〈外国籍同士の両親が日本で結婚している場合〉
・婚姻届の記載事項証明書
 両親が婚姻届を提出した市区町村役場で取得します。外国籍同士の結婚の場合に必要になります。日本人と外国籍の結婚では取得できません。
〈本人が外国籍の方と離婚したことがある場合〉
・離婚届の記載事項証明書
 離婚届を提出した市区町村役場で取得します。海外で離婚届をした場合は不要です。
 裁判離婚の場合は、確定証明書のついた審判書又は判決書の謄本も必要です。日本人との離婚の場合は、元配偶者の戸籍謄本を取得します。
〈外国人同士の両親が離婚したことがある場合〉
・離婚届の記載事項証明書
 両親が離婚届を提出した市区町村役場で取得します。海外で離婚届をした場合は不要です。日本人外国籍の離婚では取得できません。日本人親の戸籍謄本を取得しますが、再婚や転籍などをしている場合は外国籍親の記載がないので、除籍謄本をとって実親の記載がある時期までさかのぼります。
〈両親、配偶者、子が日本で死亡している場合〉
・死亡届の記載事項証明書
 死亡届を提出した市区町村役場で取得します。
 
ⅱ. 法務局で取得する書類について
マンション、土地、建物を所有している場合〉
・建物の登記事項証明書
・土地の登記事項証明書
 居住用、投資用に関係なく、本人だけでなく同居の家族が所有している場合も必要になります。
〈法人の経営者の場合〉
・法人の登記事項証明書
 会社を経営している場合で、本人だけでなく、同居の親族が経営している場合でも必要になります。
 
ⅲ. 税務署で取得する書類について
 一般の会社員の方は必要ありませんが、2ヶ所以上の勤務先から給与をもらっている場合や、副業をしている場合により、確定申告をしている方は以下の書類のみ必要です。
・個人の所得税納税証明書(その1、その2)直近3年分
・確定申告書の控えの写し(受付印のあるもの)
〈個人事業主の場合〉
・所得税納税証明書(その1、その2)直近3年分
・消費税納税証明書 直近3年分 
 課税対象:前々年の売上が1,000万円を超える場合に必要
・事業税納税証明書 直近3年分 課税対象:年間売上290円以上で必要
 消費税・事業税は課税対象となっていない場合は証明書は不要になります。
 同居の親族が個人事業主の場合も必要です。
・自営業者個人としての確定申告書の控えの写し(受付印のあるもの)直近1年分
〈法人経営者の場合〉
・法人税納税証明書(その1、その2)直近3年分
・消費税納税証明書 直近3年分 
 課税対象:前々年の売上が1,000万円を超える場合に必要
・事業税納税証明書 直近3年分 課税対象:年間売上290円以上で必要
・法人府市民税納税証明書 直近1年分
・経営者個人の所得税納税証明書(その1、その2)直近3年分
 消費税・事業税は課税対象となっていない場合は証明書は不要になります。同居の親族が法人経営者の場合も必要です。経営する法人が複数の場合はそれぞれの法人分が必要で、代表取締役以外でも役員に入っている場合も必要です。
・法人確定申告書控えの写し(受付印のあるもの)直近1年分
・営業許可証の写し 許認可が必要なビジネスの場合
・源泉所得税の納付書の写し 直近1年分
・源泉徴収簿の写し
 
ⅳ. その他の所から取得する書類について
年金事務所から取得する書類〕
〈個人事業主、会社員でも国民年金を支払っている方の場合〉
・年金定期便の写し  毎年1回、誕生日の月に自宅に届きます。
・年金保険料領収書の1年分の写し  年金定期便を紛失している場合
・国民年金保険料納付確認書の写し 年金定期便も年金保険料領収書も紛失している場合
〈法人経営者の場合〉
・厚生年金保険料領収書の写し
・厚生年金加入届の控えの写し
 厚生年金に加入していなかった場合は、帰化申請の事前に加入します。厚生年金の加入前の期間は国民年金の支払い義務がありますので、直近1年分国民年金納付領収書を提出します。
 
勤務先から取得する書類〕
・源泉徴収票(原本)直近1年分
 直近1年以内に転職している場合は、前職分の源泉徴収票も必要です。
・在勤及び給与証明書
 帰化申請する前の前月分が必要です。法人経営者、個人事業主も自己証明で必要です。
 
自動車安全運転センターから取得する書類〕
・運転記録証明書(過去5年分)
〈運転免許を失効したことがある方、取り消されたことがある方〉
・運転免許経歴証明書  最寄りの警察署で取得します。
 
その他に用意する書類〕
・証明写真2枚 5cm×5cm
・スナップ写真 両親や兄弟姉妹、友人と写っているもの。別々の種類で3枚ほど必要。
・在留カード(表+裏) 原本+写し
・最終学歴の卒業証書の写し
 卒業証書がない場合は、出身校から卒業証明書を取得する必要があります。
・運転免許証の写し
・パスポートの写し
 表紙、顔写真のページ、捺印のあるページ全部のコピーが必要です。現在所持している
 パスポートと失効したパスポートも必要です。
・国家資格など、公的資格をもっている場合はその資格証明書の写し
 弁護士や行政書士、医師や看護師など公的資格を持っている場合
・不動産賃貸借契約書の全ページの写し 賃貸物件で住んでいる方は必要です。
 
ⅴ. 申請人の方の本国から取得する書類について
韓国籍の方〉
 韓国籍の方は、本国書類を在日韓国領事館で取得できます。全ての書類は日本語翻訳と翻訳者の記名・押印が必要です。なお、本国に戸籍がない方は、本国の証明書類は取得できません。その場合は、ご相談ください。
・基本証明書
・家族関係証明書
・婚姻関係証明書
・入養関係証明書
・親養子入養関係証明書
・除籍謄本
・家族関係証明書(父側と母側のそれぞれ必要)
・婚姻関係証明書(父と母について)
 
中国籍の方〉
 日本国内では取得できず、中国の「公証処」で取得します。日本の公証役場にあたる機関です。全ての書類は日本語翻訳と翻訳者の記名・押印が必要です。
・出生公証書(本人)
 ご本人が中国で生まれた場合です。日本生まれの場合は、日本の出生届を出した役所で出生届の記載事項証明書を取得します。
・親族関係公証書(両親・兄弟姉妹・子が記載されているもの)
 これもご本人が日本生まれの場合は出ません。その場合は、日本国内にある華僑総会で取得できます。
・結婚公証書(結婚している方)
 中国人同士の結婚で、日本の中国大使館で手続きした場合は、中国本土では取れませんので、中国大使館で取得します。日本人と中国人との結婚で、最初に日本の役所に婚姻届を提出した場合は、中国大使館では取得できません。中国本土で取得します。
・離婚証明書(離婚している方) 
 取得先は、上記の婚姻手続きの場合と同様です。
・養子公証書(養子縁組している場合)
・結婚公証書(申請人の両親について)
・離婚公証書(両親が離婚している場合)
・死亡公証書(親や子が死亡している場合)
・国籍証書
 中国人の方の国籍証明書に当たるものです。正式には「退出中華人民共和国国籍証書」といい、帰化したら中国籍を退出するという証書です。中国大使館で取得します。
 
〈その他の国の方々の一般的に必要な本国書類〉
 各国によって、それぞれの具体的な名称は異なります。
・出生公証書(本人)
・婚姻証明書(本人・両親)
・離婚証明書(本人・両親)
・親族関係証明書
 この証明書が出せない場合は、両親・兄弟姉妹・子全員の出生証明書が必要です。
・国籍証明書
・死亡証明書(両親・兄弟姉妹)
 
〈法務省個人情報保護係から取得する書類〉
 次の2つの書類については、法務局から提出書類として求められている書類ではありませんが、閉鎖外国人登録原票には在留カードに変更になる前の日本での居住歴が記載されています。出入国記録には海外出国・入国が多い場合にパスポートのハンコではよく分からない場合があります。双方とも、書類作成にあたって大変参考になります。
・閉鎖外国人登録原票
・出入国記録
 双方とも法務省に、保有個人情報開示請求書を提出して開示を受けます。
 
帰化申請後に注意すべきこと】
 帰化申請が受理された後、次に掲げる事由が生じた時や、新たな予定等が生じた時は、法務局の担当官に連絡をするか、サポートを依頼している行政書士にご相談ください。
住所または連絡先を変更した時
結婚、離婚、出生、死亡、養子縁組、離縁など身分関係に変動が生じた時
 結婚した時は、配偶者についての必要書類を提出します。
在留資格や在留期限が変更された時
日本からの出国予定が生じた時
 必ず事前に法務局に海外に行くことを報告してから行かなければならないという規則になっていますので、注意が必要です。
日本からの出国後、再入国した時
交通違反など、法律に違反する行為をした時
勤務先など、仕事関係が変更された時
 転職した場合は、転職先の証明に必要な書類を提出します。
・帰化後の本籍や氏名を変更しようとする時
・その他、法務局へ連絡する必要が生じた時